中外創薬 助成研究報告書2023
314/324

― 312 ―結果及び考察GEFタンパク質は,インスリン分泌を惹起するグルコース刺激後にGTP型/GDP型比率が2度上昇することを見出しました.さらに,この上昇のタイムコースとインスリンの1層分泌,2層分泌との間に相関性が見られました.これまでの当研究室の知見として,2層分泌が生じる時間にRab27aがGTP型からGDP型に変換されることも見出しています.そのため,GEFタンパク質とGDP型Rab27aの相互作用が2層分泌を抑制性に制御することが想定されました.今後は,想定される機構の解析を進めたいと考えています.小胞形成タンパク質が,GDP型Rab27aと結合することで,細胞膜上に集積することが示唆されました.小胞形成タンパク質は,天然変性領域を有する天然変性タンパク質であり,それは液液相分離を起こすことが知られています.また,最近の報告として,天然変性タンパク質が制御するエンドサイトーシス機構が想定されています4).そこで,GDP型Rab27aと小胞形成タンパク質の相互作用が液液相分離を誘起するかや,それがエンドサイトーシスに及ぼす影響の解析を進めたいと考えています.おわりに本年度の研究進捗により,GDP型Rab27aがエンドサイトーシスを制御しているという仮説を立証に向けたデータを取得することができました.今後も研究を継続することで,膵β細胞におけるエンドサイトーシス機構の解明につなげたいと考えています.そして,エンドサイトーシスを指向した,これまでにない治療薬開発の基盤を確立したいです.謝 辞2023年度の1年間は,研究の前進や,これまでの研究成果をまとめた筆頭論文投稿など,実りの多い一年にすることができました.このように充実した研究に取り組むことができたのは,公益財団法人 中外創薬科学財団様のご支援のおかげでございます.この場を借りて,深く感謝申し上げます.今後も,創薬に貢献できるような研究成果を積み重ねていけるよう精進したいと思います.引用文献 1. https://doi.org/10.1073/pnas.2021764118, 20212. https://doi.org/10.1242/jcs.030544, 20083. https://doi.org/10.1128/MCB.00895-13, 20134. https://doi.org/10.1016/j.ceb.2022.02.002, 2022

元のページ  ../index.html#314

このブックを見る