― 309 ―kinases and phosphatases. Prog Lipid Res, 48:307-343; (2009).2. Morioka S, Nakanishi H, Yamamoto T, Hasegawa J, Tokuda E, Hikita T, Sakihara T, Kugii Y, Oneyama C, Yamazaki M, Suzuki A, Sasaki J, Sasaki T.: A mass spectrometric method for in-depth profiling of 実験方法試験管内でPTENがLPIP3を脱リン酸化することは既に見出している.PTENのLPIP3脱リン酸化活性を細胞レベルで確かめるため,HEK293T細胞において,トランスフェクション法を用いたPTEN(野生型及び活性欠失変異体)過剰発現,及びsiRNAを用いたPTEN発現抑制を行い,細胞内及び細胞培養液中のLPIP3量を質量分析法を用いて定量した.次に,PTEN-LがLPIP3を脱リン酸化するかどうか,試験管レベル及び細胞レベルで検討した.まず,PTEN-Lリコンビナントタンパク質を精製し,試験管内でLPIP3と反応させた.そして,HEK293T細胞においてPTEN-L(野生型及び活性欠失変異体)を過剰発現し,細胞内及び細胞培養液中のLPIP3量を質量分析法を用いて定量した.結果及び考察PTENを過剰発現した細胞において,細胞内におけるLPIP3量の減少(コントロールの約3分の1倍),及び細胞外におけるLPIP3量の減少(コントロールの約2分の1倍)が認められた.またPTEN-Lを過剰発現した細胞においても,細胞内におけるLPIP3量の減少(コントロールの約10分の1倍),及び細胞外におけるLPIP3量の減少(コントロールの約4分の1倍)が認められた.一方,PTENを発現抑制した細胞においては,LPIP3の細胞内における顕著な蓄積(コントロールの約20倍),及び細胞外での増加(コントロールの約1.6倍)が認められた.試験管内での実験においてPTEN,PTEN-LがLPIP3を分解していた結果と併せ,これらの酵素が実際に細胞内外でLPIP3を基質にしていることが示唆された.PTEN-Lは細胞外で切断され,その断片(ホスファターゼドメインを含む)は腫瘍抑制的に機能することから4),PTEN-LのLPIP3代謝が細胞外におけるがん抑制機構に寄与している可能性が考えられる.おわりにLPIPsは新規分子ゆえその研究分野は展開初期であり,その動態はほとんど未解明である.今回3か月という短い期間であったが,同定した幾つかのLPIP3代謝酵素を,細胞を用いて検証することができた.またいくつかの知見から,LPIP3は何らかの機構により細胞外へ放出されることが予想されており,細胞外LPIP3はがん悪性化に関与していると考えている.今後は細胞外におけるLPIP3の代謝機構の解明,及びLPIP3排出輸送体の同定を行い,LPIP3がん悪性化機構を解明することで,難治性がんの創薬ターゲットを提示していく予定である.謝 辞本研究においてご指導を賜りました佐々木雄彦教授,佐々木純子准教授,長谷川純矢助教に深謝いたします.引用文献 1. Sasaki T, Takasuga S, Sasaki J, Kofuji S, Eguchi S, Yamazaki M, Suzuki A.: Mammalian phosphoinositide
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