中外創薬 助成研究報告書2023
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(RT-qPCR)である.さらに,RT-qPCRで使用されるプライマー配列に変異を持つ新しい変異体を,RT-PCRでは検出できない可能性がある.しかし,検出限界と精度はRT-qPCRに劣り,抗体が変異したウイルスタンパク質を認識できない場合,新しい変異型の検出で偽陰性を示す可能性もある.CRISPR-Casを用いた方法では,RT-qPCRと同等の感度でSARS-CoV-2 RNAを約1時間検出することができる.この方法では,結果が蛍光測定やラテラルフローストリップで検出されるため,PCRのサーマルサイクラーは必要ない.しかし,CRISPR-Casを用いた方法が,標的配列領域に変異を持つ変異体を検出できるかどうかは不明である.この方法には,実験室のセットアップを必要とするRNA抽出も含まれる.本研究では,SARS-CoV-2 のウイルスの感染メカニズムが,ウイルス表面に発現しているスパイクタンパク質のRBD(receptor binding domain)と,ヒト細胞表面の ACE2 受容体のタンパク質間相互作用(protein-protein interaction, PPI)であることに着眼した2).すなわち,このPPIを阻害する分子を見出すことができれば,ウイルス感染を阻害する低分子薬剤創出へつながるのではないかと考えた.本研究では,まずRBD結合ペプチドを合成し,RBDとの結合阻害アッセイ系を構築し,そのヘリックスペプチドを模倣する分子をスクリーニングことで,ウイルス感染阻害剤を見出すことを目的として研究を進めた.実験方法まず,マイクロ流体力学とポータブル蛍光偏光イメージングアナライザーをベースとした,迅速かつ高感度な検出のための蛍光ペプチドセンサーを実証することとした.このセンサーは,中和抗体に代わる治療薬として注目されているhACE2のN末端から設計されたα-ヘリックスペプチドに基づいている.Karoyanらは,RBDとの直接的な相互作用に寄与しない13のアミノ酸残基を同定し,これらの残基に変異を導入してα-らせん構造を安定化させた.合成されたペプチドのうち,P8は高いらせん傾向を示し,非天然アミノ酸を含まないRBDに対するKdは24 nMであった3).そこで,P8の塩基配列をもとに,Fmoc固相合成法を用いて蛍光ペプチドを合成した.ペプチドは,Rink Amide MBHA resin LL (0.30-0.45 mmol/g)上で標準的なFmoc固相合成を用いて手動で合成した.樹脂(100 mg, 0.03 mmol)をDMF中で一晩膨潤させた.DMFを除去し,続いてDMF中20%ピペリジン5 mLを加え,Fmoc基を脱保護した.溶液を室温で振とう後20分で除去した.樹脂をDMFで5回洗浄し,TNBS試験を行って脱保護を確認した.濾過した樹脂にDMF 1 mL,Fmoc-アミノ酸 (0.09 mmol),PyBOP (47.8 mg, 0.09 mmol)およびHOBt-H2O (13.8 mg, 0.09 mmol)を含むDMF溶液 1 mL,NMM (0.14 mmol)を含むDMF溶液 1 mLを加えた.溶液を室温で1時間振とうし,DMFで洗浄した.TNBS試験でアミノ酸カップリングを確認した後,同様にペプチド鎖を脱保護し伸長した.8-Dan,14-Dan,26-Danの合成では,それぞれ8番目,14番目,26番目のアミノ酸としてFmoc-Lys(Mtt)-OHを導入した.27番目のアミノ酸の導入直後に,ジクロロメタン中の20%ヘキサフルオロイソプロパノール5mLを20分間加えて,リジン側鎖のMtt基を脱保護した.その後,樹脂をDMFで洗浄し,TNBS試験を行って脱保護を確認した.ろ過した樹脂に,塩化ダンシル (24.3 mg, 0.09 mmol) とトリエチルアミン (9.1 mg, 0.09 mmol) を3 mLのDMFに加え,室温で1時間振とうした.TNBS試験でダンシル化を確認した後,同様にFmoc脱保護を行った.N-Danの合成では,Fmoc脱保護後,塩化ダンシルをN末端アミンと直接結合させた.冷トリフル― 27 ―

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