中外創薬 助成研究報告書2023
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この選択性の高さはケミカルプロテオミクスにおいても定量的に証明された.さらにHsp90の不可逆阻害により,細胞内のリン酸化シグナルを不可逆的に阻害できることをウェスタンブロットにより明らかとした.本研究は現在,その他のタンパク質を標的としたCNSコバレントリガンドの開発を継続して進めている段階にある.図5.CNSの反応機構(上段)とCNS反応基のHsp90阻害剤開発への応用(下段)おわりにこの十数年のコバレントドラッグ研究の発展は目覚ましく,コバレントドラッグは従来の医薬品の枠を超えた新たな低分子モダリティとなりつつある.以上の本研究から見出した反応基は,いずれも細胞内において有効に機能した.視点を変えれば本研究で得られた成果は,多種多様な生体分子が存在する細胞内において標的タンパク質との選択的反応を可能とする新たな細胞内有機化学でもある.今後は,本研究をケミカルバイオロジーの観点から継続して進めるとともに,それぞれの反応基についてコバレントドラッグ創薬における有用性を明らかとしていきたい.謝 辞本研究を助成して頂きました公益財団法人 中外創薬科学財団に深く感謝の意を表します.引用文献…1. Naoya Shindo, Hirokazu Fuchida, Mami Sato, Kosuke Watari, Tomohiro Shibata, Keiko Kuwata, Chizuru Miura, Kei Okamoto, Yuji Hatsuyama, Keisuke Tokunaga, Seiichi Sakamoto, Satoshi Morimoto, Yoshito ― 24 ―

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