(ii)ボロン-Wittig反応による2-(ボリル)-1,3-ブタジエンの合成(iii)(E),(Z)-1,1-ジ(ボリル)-2-ブテン-1-d1の調製と不斉アリルホウ素化反応今回,我々は,まず(i)二重結合異性化反応では合成することができない「3,3-ジ(ボリル)-1-ブテン」の調製とそれを用いた不斉アリルホウ素化反応の開発を行いました.また(ii)反応過程で生じる活性種を用いてボロン-Wittig反応を行いました.ついで(iii)重水素医薬品(重水素ポリケチド)の合成を目指して(E)および(Z)-1,1-ジ(ボリル)-2-ブテン-1-d1の調製とそれを用いた不斉アリルホウ素化反応の開発を行いました.実験方法(i)3,3-ジ(ボリル)-1-ブテンの調製と不斉アリルホウ素化反応(a) Chirikらの報告に基づき9),プロピンから合成した1,1-ジ(ボリル)-1-プロペン(1.46 g, 4.98 mmol)にTHF(60 mL)を加え,−78度に冷やす.これにリチウムテトラメチルピペリジド(LiTMP, THF溶液, 6.50 mmol)を加え,3時間撹拌する.そこへヨードメタン(1.52 g, 10.7 mmol)を加え,さらに30分攪拌する.飽和塩化アンモニウム水溶液を加え,酢酸エチルで抽出し,有機層を乾燥後,カラムクロマトグラフィー(シリカゲル)で精製すると3,3-ジ(ボリル)-1-ブテンが得られる.収量0.96 g(収率63%)(b) ベンズアルデヒド(21.2 mg, 0.20 mmol),(R)-TRIP(7.55 mg, 5.0 mol%),モレキュラーシーブ(20 mg)にトルエン(1.0 mL)を加え,−40度に冷やす.これに3,3-ジ(ボリル)-1-ブテン(80.4 mg, 0.26 mmol)の1.0 mL トルエン溶液を加え,24時間攪拌する.飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え,ジエチルエーテルで抽出し,有機層を乾燥後,カラムクロマトグラフィー(シリカゲル)で精製すると1,2-オキサボリナン-3-エンが得られる.収量31.0 mg(収率83%, 96% ee)(c) 3,3-ジ(ボリル)-1-ブテン(80.6 mg, 0.26 mmol)にジクロロメタン(4.0 mL)を加え,−78度に冷やす.これに三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体のジクロロメタン溶液(0.51 M, 81.3 mL, 21 mol%)を加え,10分後にさらにベンズアルデヒド(20.7 mg, 0.20 mmol)を加える.この溶液を,−78度で,58時間攪拌する.飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え,ジエチルエーテルで抽出し,有機層を乾燥後,カラムクロマトグラフィー(シリカゲル)で精製するとδ位にホウ素が置換したホモアリルアルコールが得られる.収量46.0 mg(収率81%)1,1-ジ(ボリル)-1-プロペン(1.49 g, 5.05 mmol)にTHF(60 mL)を加え,−78度に冷やす.これにリチウムテトラメチルピペリジド(LiTMP, THF溶液, 6.57 mmol)を加え,3時間撹拌する.そこへベンズアルデヒド(606 mg, 5.71 mmol)を加え,さらに45分攪拌する.飽和塩化アンモニウム水溶液を加え,酢酸エチルで抽出し,有機層を乾燥後,カラムクロマトグラフィー(シリカゲル)で精製すると(E)-2-(ボリル)-1-フェニル-1,3-ブタジエンが得られる.収量0.99 g(収率76%)Crombieらの報告に基づき10),ジブロモメタンを10%重水酸化ナトリウムの重水溶液中で還流してジブロモメタン-d2(重水素化率98%)にした.これを用いて既存の方法に従い5,6,11,12),(E)および(Z)-1,1-ジ(ボリル)-2-ブテン-1-d1(重水素化率 >97%)を調製した.(a) ベンズアルデヒド(20.7 mg, 0.20 mmol),(R)-TRIP(7.80 mg, 5.2 mol%),モレキュラーシ― 248 ―
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