応性の順列について評価した(図4).その結果,ジクロロアセタミド(DCA: α-dichloroacetamide)がシステインに対してCFAよりも穏やかな反応性を有する事や生じたシステイン付加体が加水分解を伴う高い反応可逆性を有する事実を新たに見出した.DCAを反応基として有するKrasG12Cに対するコバレントドラッグ3および4を合成して機能評価したところ,既存の阻害剤であるadagrasibと同程度の細胞増殖阻害活性を有しており,コバレントリガンドとして機能できることを明らかとした2).DCA誘導体である3は,標的タンパク質のシステインと反応した後,タンパク質表面の水分子のアクセスが困難な環境下において共有結合を維持することでコバレントリガンドとして働いていると考えられる.図4.ジハロアセタミド類の反応性評価(上段)とDCA反応基のKrasG12C阻害剤開発への応用(下段)3.リジンに対する新たな反応基の開発本研究では,ベンゾニトリルとリジンアミノ基との反応に着目して複数のベンゾニトリル誘導体を合成し,これらの細胞内での反応性をABPPにより評価した.その結果,オルト位にスルホンアミド基を有するベンゾニトリルであるCNS (2-cyanoaryl sulfonamide)が細胞内タンパク質のリジンと反応することが明らかとした(図5).CNSは,中性水溶液中ではアミン誘導体と反応しないことから,本反応はタンパク質表面のミクロ環境(弱酸性および疎水性環境などが推測される)において活性化を受けてタンパク質リジンと反応する興味ある反応特性を有していることが推測された.CNS基を有するHsp90タンパク質に対するコバレントリガンド4を合成して SKB3細胞中での反応を評価したところ,極めて高い選択性でHsp90と共有結合を形成できることをABPPにより明らかとした.― 23 ―
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