岡山大学工学部・化学・生命系学科,自然科学研究科有機金属化学教育研究分野Abstractはじめにポリケチド天然物は,酢酸やプロピオン酸などの短鎖脂肪酸が縮合し,形式上ポリケトメチレン鎖中間体を前駆体として生成する二次代謝産物であり,有用な生理活性を示すものが多くあります.そのためポリケチド天然物を効率よく合成する方法論の開発は,これらの安定供給を実現する鍵であり,創薬研究において,有機合成化学が大きな役割を担う研究分野の一つであります.光学活性なホモアリルアルコールは,ポリケチド天然物の合成における重要な合成中間体(キラルビルディングブロック)として知られています.これまで様々な反応が開発されてきましたが,ホモアリルアルコールを合成する際に第一選択肢となるのは,いまだにアリルホウ化試剤を用いたアルデヒドの「不斉アリルホウ素化反応」です.この反応は,比較的厳密な六員環いす型遷移状態を経由して進行するため,γ位に置換基を持つアリルホウ化試剤(置換基がメチル基の場合クロチルホウ化試剤と呼ばれる)を用いた場合,その幾何に対応してそれぞれantiおよびsyn体のホモアリルアルコールが立体特異的に得られます.そのためアリルホウ化試剤を幾何選択的に合成することが,ホモアリルアルコールを立体選択的に合成するうえで,必須の課題となります.しかし,合成法が確立しているクロチルホウ化試Okayama University― 246 ―We studied three topics to develop the efficient synthesis of polyketide natural products for drug discovery research. (i) The synthesis of 3,3-di(boryl)-1-butene from 1,1-di(boryl)-1-propene and an asymmetric allylboration reaction with aldehydes were developed. (ii) Boron-Wittig reaction was carried out using the carbanionic species generated from 1,1-di(boryl)-1-propene with LiTMP. (iii) We synthesized deuterated allylic boron reagents ((E) and (Z)-1,1-di(boryl)-2-butene-1-d1) and applied to asymmetric allylboration reactions with aldehydes.創薬研究に資するポリケチド天然物の効率的な合成法の開発Development of efficient synthesis of polyketidenatural products for drug discovery research三浦 智也Tomoya Miura
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