が観察された.Smc3ヘテロマウスは,コルネリア・デ・ランゲ症候群の症状で見られる不安関連行動の増加を示した.このように,神経細胞におけるコヒーシンは,クロマチンループ形成制御を介して遺伝子発現を調節することによって,神経ネットワーク形成に寄与しており,コヒーシンの欠損は高次脳機能障害につながることがわかった (図1).実験方法1. 発生期の中枢神経系におけるコヒーシンの発現1-1. 組織免疫染色コヒーシンサブユニットのひとつであるSmc3の発生期脳における発現を,組織免疫染色により検証する.妊娠12, 14, 16, 18日目のマウスから胎児を摘出し,4% PFA中で脳を取り出した.摘出した脳は4% PFA中で一晩浸漬固定した.脳組織を30% sucrose液中に浸漬後,凍結ブロックを作成し,クライオスタットで薄切して厚さ20 μmの切片とした.脳切片はスライドガラスに貼り付け,乾燥後,0.1% Triton X-100, 5% Bovine serum albumin (BSA) / PBS中に浸漬した.その後,抗Smc3抗体 (ウサギ由来ポリクローナル抗体)を1次抗体として用いて4℃, 一晩染色した.続いて,2次抗体として,Alexa 568 Goat anti Rabbit IgGを用いて,室温, 1時間染色した.封入後,蛍光顕微鏡下で観察し,各発生段階におけるSmc3の発現を検証した.1-2. Real-time PCR胎生期~成体までの各発生段階におけるSmc3の発現をReal-time PCR法によって定量的に評価する.マウス大脳皮質よりRNAを抽出し,cDNAを作成,Taq-Man probeを用いてReal-time PCRを行った.2. コヒーシン欠損マウスの作成Cre-LoxPシステムを用いて,Smc3のコンディショナルノックアウトマウスを作成した.Smc3のexon 1, 2の両端にloxP配列を挿入したSmc3 Flox/Floxマウスを作出した.全身でSmc3を欠損させるために,全細胞でCreリコンビナーゼを発現するCAG-Creマウスを用いた.神経細胞特異的なSmc3欠損マウスを作成するために,神経細胞にCreリコンビナーゼを発現するtau-CreマウスとSmc3 Flox/Floxマウスを交配した.得られたtau-Cre; Smc3 +/Floxマウス (ヘテロ欠損マウス)と,Smc3 Flox/Floxマウスを交配し,tau-Cre; Smc3 Flox/Flox マウス (ホモ欠損マウス)を作出した.3. コヒーシン欠損マウスの組織解析コヒーシン欠損マウスの大脳皮質の層構造をNissl染色によって検証した.胎生期~成体までの各発生段階で,野生型マウス,Smc3 +/-マウスを4% PFAで灌流固定を行い,脳組織を摘出した.摘出した脳は4% PFA中で一晩浸漬固定した.脳組織を30% sucrose液中に浸漬後,凍結ブロックを作成し,クライオスタットで薄切して厚さ20 μmの切片とした.脳切片はスライドガラスに貼り付け,乾燥後,Nissl液で染色し,観察した.― 241 ―
元のページ ../index.html#243