上の事から我々は,FVSについてはタンパク質中のシステイン残基を標的とした反応基として開発を進めることとした.まず合成法の検討を行なう事で ベータ位に様々なアルキル基や芳香環を置換基を有するFVSの供給を実現した.次に,これらFVS誘導体のシステイン反応性を水中において評価したところ,FVSはベータ位に置換基を導入しても十分な反応性を維持し,置換基の構造に依存した反応性のチューニングが容易であることを見出した.この特性は, α, β-不飽和カルボキサミドやβ位にフッ素を持たないビニルスルホンアミドでは達成困難な優れた特性である.また,FVS基を導入したブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)に対するコバレントドラッグの開発を進めた.その結果,阻害剤1および2はRamos細胞内においてBTKと選択的に共有結合を形成し,リン酸化シグナルを阻害する知見を得た.図3.FVS反応基の反応評価(上段)とBTK阻害剤開発への応用(下段)更に,筆者らが研究助成期間内に創り出したアザ−アルテミシニンの中から,下図のように低濃度で α-SMA [α−平滑筋アクチン (ACTA2)] や線維化に関連するコラーゲンの産生を強力に抑制する創薬リード化合物を見出すことができた(図4).また,前頁に記載した 6−アザ−アルテミシニン類については,iPS細胞から誘導した静止期星細胞に対しての細胞毒性がほとんど問題とならないという知見を得ることができた.2.ジハロアセタミド基を有するコバレントドラッグの開発これまでに申請者はクロロフルオロアセタミド基(CFA)がシステインに対する標的タンパク質選択性に優れた反応基であることを明らかとしている1).本研究では、この知見をさらに拡張してCFA以外の様々なジハロアセタミドの反応性を網羅的に評価する事でシステインに対する新たな反応基を見出すことを目指した.まず,一連のジハロアセタミド誘導体を合成し,水中におけるシステイン反― 22 ―
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