中外創薬 助成研究報告書2023
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図3. 筋幹細胞特異的Trp欠損マウスにおける組織学的解析するが,細胞増殖などの過程で局在変化は認められなかった.これらの結果より,同じ機械受容イオンチャネルにも関わらず,PIEZO1およびTRPチャネルは機能的なすみわけがあることが示唆された.また,TRP「X」チャネルの表現型解析の一環として,トランスクリプトーム解析を行い,同チャネルの下流にて機能する細胞内情報伝達経路の同定にも成功するとともに,細胞周期,代謝への関与を明らかにしている(投稿準備中).おわりに本研究では,骨格筋再生に関わるイオンチャネルとして,膜張力をはじめとする機械刺激により活性化されるイオンチャネル群に着目し,その機能解明を行った.特に2010年に機械受容チャネルとして同定され,ノーベル生理学・医学賞の受賞対象にもなったPIEZO1とともに,種々の機械受容チャネルについて遺伝子欠損マウスを用いて検討を行った.その結果,PIEZO1は筋幹細胞の細胞分裂過程にて分裂溝に集積し,特に未分化の幹細胞分裂に関与することを明らかにした5).さらに他の機械受容チャネルとして,TRP「X」チャネルが細胞増殖,代謝制御に関与することを明らかにした(投稿準備中).骨格筋機能は運動機能のみならず,エネルギー代謝,全身の恒常性に極めて重要な役割を果たしている.筋幹細胞による筋再生機構は,骨格筋疾患のみならず,筋恒常性維持を通じて老齢期のいわゆる「ロコモティブシンドローム」に対しても,密接に関与する.今後,これらのイオンチャネルを特異的に制御する化合物等の同定をはじめとした創薬研究を通じて,筋再生の亢進による健康長寿の達成に向け,さらに研究を遂行していきたい.謝 辞本研究の遂行につき,多大なるご支援をいただきました公益財団法人 中外創薬科学財団様,お力添えを頂きました共同研究者の先生方,さらに静岡県立大学薬学部統合生理学分野の教室員にこの場をお借りして深く御礼申し上げます.― 237 ―

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