Piezo1欠損マウス(Piezo1tm1c(KOMP)Wtsi)をUC Davisマウスリソースセンターより入手した.本マウスは全身性の欠損により胎生致死に至ることから,筋幹細胞(筋衛星細胞)特異的にCreレコンビナーゼを発現するPax7-CreERT2と掛け合わせを行った.Creレコンビナーゼの誘導のためタモキシフェンを腹腔内に5回(1日1回)注入することで,コンディショナル欠損を誘導した5).・組織学的解析:― 234 ―実験方法・実験動物:各遺伝子欠損マウスについてタモキシフェン注入後に筋線維融解作用を持つヘビ毒(カルジオトキシン)を前脛骨筋に注入することで,筋再生能を評価した.組織学的解析としてヘマトキシリン・エオジン染色,筋線維直径,筋重量測定等により評価を行った.内在性PIEZO1のC末端にtdTomatoタグを付加するPiezo1-tdTomatoマウス6) を用いた.また,他の機械受容イオンチャネル遺伝子欠損マウスについても,同様な解析を行った.・細胞・機能解析:筋幹細胞の性状解析について,増殖能,分化能等を検討した.筋幹細胞単離のためコラゲナーゼにて筋組織を溶解後,セルソーターを用いてCD106+, CD31-, CD45-, Sca-1-細胞群を筋幹細胞として回収した(詳細は引用文献5を参照).イオンチャネルとしての機能解析として,カルシウムイオン指示薬Fura-2を用いて検討を行った.PIEZO1の化学的アゴニストYoda-1を用いることで,PIEZO1の機能的な発現の確認を行った.また,細胞内情報伝達経路の解明を目指し,単離筋幹細胞を用いてオミクス解析を行った.RNA-seq解析としてトランスクリプトミクス研究会(九州大学)との共同研究にて実施・解析いただいた.またPIEZO1結合因子同定を目指したプロテオーム解析として,PIEZO1-tdTomatoマウスより筋衛星細胞を単離後,細胞サンプルを調製し,可溶化,抗tdTomato抗体を用いた免疫沈降を行い,網羅的プロテオーム解析を行った.結果及び考察1)骨格筋再生過程におけるPIEZO1イオンチャネルの役割:これまでの申請者の研究4)では主に筋管形成に着目して検討を行ったが,骨格筋全体(筋幹細胞,筋芽細胞,成熟筋線維)でのPIEZO1の発現解明を試みた.既知発現データベース等でのmRNA解析により,Piezo1は筋幹細胞にて高発現すること,一方で成熟筋線維ではその発現は著しく低下することが示された.タンパク質レベルでの発現を確認するため,内在性PIEZO1のC末端にtdTomatoが融合した形で発現するPiezo1-tdTomatoマウスより筋線維を単離し,PIEZO1-tdTomatoの発現検出を試みた.筋幹細胞特異的に発現する転写因子Pax7をマーカーとして共染色を行ったところ,PIEZO1の発現はPax7に限局して存在することが認められた.また同マウスよりFACS(Fluorescent-Activated Cell Sorting)にて単離した筋衛星細胞にて培養した細胞群ではPIEZO1-tdTomatoの発現が強く認められた。一方で、成熟筋線維ではPIEZO1-tdTomato由来の蛍光はほとんど検出されなかったことから、mRNAレベルの解析との整合性が示された。PIEZO1の幹細胞での役割解明のため、遺伝子欠損マウスの作出を試みた。Piezo1の全身性欠損マウスは胎生致死を示すことから、Pax7-CreERT2/loxPシステムを用いてタモキシフェン誘導型の筋
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