抗体(BioLegend Cat# 212720)を用いて細胞を染色し,FACS Jazzセルソーター(ベクトンディッキンソン)にて実施した(Nakai et al., STAR Protoc 2021).RT-PCR解析のために,培養した細胞からISOGEN(ニッポンジーン)を用いてRNAを抽出し,SuperScript IV(Invitrogen)を用いた逆転写反応によってcDNAを合成した.cDNAをSYBR Greenマスターミックス(Roche)を用いた定量的PCR解析(LightCycler, Roche)に供し,遺伝子発現量を解析した.線維化関連遺伝子の探索のために,レンチウイルスにパッケージングされたマウス遺伝子に対するshRNAライブラリー(Vector Builder)をポリブレンを用いてReplic細胞に導入した.マウス腎障害モデルの解析C57black/6系統の野生型マウスの片側尿管を結紮・切断し,片側尿管結紮による水腎症モデルを作出した11,13).施術後7,10,14日目に障害腎および対側腎のRNAを採取し,RT-PCR解析を実施した.組織の一部をホルマリン固定し,パラフィン切片のElastica-Masson染色により,尿細管障害を評価した14,15).図2. Replic細胞結果及び考察Replic細胞の分化と腎線維化REP細胞は尿細管の間隙に存在する線維芽細胞の一種であり,PDGF受容体やCD73(5’-nucleotidase)を細胞表面に発現することが知られているが1,16),これらの発現はREP細胞に対する特異性が低い.そこで,Epo遺伝子の発現制御領域下でCre組換え酵素を発現するトランスジーンを用いて,REP細胞において蛍光タンパク質tdTomatoを恒常的に発現する遺伝子改変マウスを樹立し,REP細胞の単離解析に用いている1,17,18).Replic細胞は,tdTomato発現を指標として単離したREP細胞由来の細胞株であるため,すべての細胞が赤色蛍光を安定して発現する(図2)12).Replic細胞は,平滑筋アクチン(Acta2)やコラーゲン(Col1a1やCol1a3など)などの筋線維芽細胞様の遺伝子発現様式を示すことから,培養中にREP細胞が筋線維芽細胞へと形質転換した細胞であると考えられる12).一方,一部の細胞がCD73発現を維持しており,元の線維芽細胞の性質を残していることがわかっている.そこで,細胞表面におけるCD73の発現レベルが異なるReplic細胞を分取し,遺伝子発現を比較した.その結果,CD73の発現レベルが高いほど,筋線維芽細胞や腎線維Replic細胞は赤色蛍光タンパク質tdTomatoを恒常的に発現する.また,CD73陽性と陰性の細胞が混在する.― 228 ―
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