図1. コバレントドラッグとタンパク質の反応様式図2. 本研究で開発を目指したコバレントドラッグのための新しい反応基― 21 ―実験方法本研究では,システインを反応標的とするコバレントドラッグの反応基としてフルオロビニルスルホンアミド(FVS: β-fluorovinyl sulfonamide)およびジクロロアセタミド(DCA: α-dichloroacetamide),リジンを反応標的とする反応基としてシアノアリールスルホンアミド(CNS: 2-cyanoaryl sulfonamide)の開発を行なった(図2).各反応基の開発においては,まず始めにデザインした反応基を合成し,in vitro反応系において反応基の水中安定性や反応性を評価,次に望ましい反応特性を持つ反応基を持つアルキン誘導体を合成し,細胞内でのタンパク質反応性をABPP (activity-based protein profiling)の手法を用いて評価した.さらに反応最適化された反応基をタンパク質リガンドに導入したコバレントドラッグを合成し,ABPPによる精製タンパク質に対する反応性,細胞内での標的選択性などを評価した.また,細胞内での標的タンパク質選択性を定量的に評価するために質量分析を用いたケミカルプロテオミクスを実施した.一方で開発したコバレントドラッグの薬効をガン細胞に対する増殖抑制効果やリン酸化シグナル阻害活性をウェスタンブロッティングなどにより評価した.結果及び考察1.β−ハロビニルスルホンを反応基とするコバレントドラッグの開発本研究では,新しい反応基としてβ−ハロビニルスルホンについて検討を行った.当初にin vitro条件下において,複数のβ−ハロビニルスルホンの反応性について検討を進め,ベータ位にフッ素を有するフルオロビニルスルホンアミド(FVS: beta-fluorovinyl sulfonamide)がリジンアミノ基に対して良好な選択性と可逆反応性を持つ事を見出した.しかしながらFVSはシステイン残基に対して十分な高い反応性を示し,しかも,その付加体は安定で不可逆である事が明らかとした(図3).以
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