九州大学大学院薬学研究院Graduate School of Pharmaceutical Sciences, Kyushu University― 20 ―Covalent drugs exert strong and long-lasting biological effects through irreversibly binding to target protein. To take advantage of this property, it is important to develop new reaction chemistry useful for covalent drug discovery that achieves high target selectivity. In this project, we conducted chemical biology research to develop new reactive warheads targeting lysine and cysteine residues on proteins and their applications to covalent drug discovery for the treatment of cancer.Abstractはじめにタンパク質と反応して,その機能を不可逆的に阻害するコバレントドラッグは、強く持続する薬効を発揮できる優れた特性を有する(図1).その一方でコバレントドラッグは, 標的以外のオフターゲットタンパク質や他の生体成分と非特異的に反応することで副作用を引き起こす可能性を持つ.このような理由から製薬企業でのコバレントドラッグ開発は長年にわたり避けられる傾向にあった.ところが,この十年程度の間に,標的タンパク質と特異的に反応できる緻密に分子デザインされた新しいタイプのコバレントドラッグの開発が進められている.それらはtargeted covalent inhibitor (TCI) と呼ばれ,特にがん治療の領域において研究開発がさかんである.この背景の下で申請者は,標的特異性に優れ副作用を起こさない安全なTCIを開発するためには,コバレントドラッグに適した新しい有機反応化学の開拓が重要である.本研究では、タンパク質上のリジンおよびシステイン残基を標的とした新しい反応基のケミカルバイオロジーのアプローチによる開発と, ガンを標的とした創薬応用を目指す創薬化学研究を行った.コバレントドラッグのための有機反応化学の開発と創薬応用Development…of…organic…reactionsfor…covalent…drug…discovery王子田 彰夫Akio Ojida
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