る抗体を用いたChIPシークエンス解析を行い,ゲノム上のヒストンメチル化レベルを網羅的に解析した.すると,転写開始点前後の領域で青い線で示したRK-552を作用させた時にメチル化レベルの低下が観察された.特に骨髄腫細胞の生存に関わるIRF4遺伝子の領域を拡大すると,この部位でもメチル化が低下しており(図5a),4種類のt(4;14)陽性骨髄腫細胞株においてもIRF4発現だけが有意に低下していた(図5b).したがって,RK-552はMMSET活性を阻害し,ヒストンメチル化抑制によるIRF4発現低下を介して増殖抑制に働く機序が明らかになった.最後に既存薬との併用効果を検証した.Isobologramを用いた解析から,プロテアソーム阻害剤ボルテゾミブ,カーフィルゾミブ,免疫調節薬レナリドミド,ポマリドミドの中では,ポマリドミドが最も高い相加効果を示した(未公開データ).続いて,マウスモデルを用いて両者の併用効果の検証を進めた.骨髄腫細胞を移植したマウスに,ポマリドミド,RK-552を単独,あるいは両者を併用(combination)で治療すると,併用治療群で有意に生存期間が延長した(図6).なお,RK-552の単独投与時も併用時も体重減少や血球減少,行動異常など顕著な副作用は見られなかった.図5. (a) DMSOまたはRK-552添加時のH3K36me2抗体によるChlPシークエンス解析.全遺伝子の転写開始点(左)とIRF4遺伝子(右)領域を示す.(b) RK-552を添加し24時間培養後の遺伝子発現変化の定量PCR測定結果.*はDMSOに対するone-way ANOVA Student-Newman-Keuls multiple comparison testによるP<0.05.図6. 免疫不全マウス尾静脈からKMS26細胞株を移植,2週間後から,DMSO,ポマリドミド(Poma),RK-552,または両者(combi)を,腹腔内投与した際のカプランマイヤー曲線.p値はLog Rank testによる値.― 204 ―
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