い1-3).図2. 初発時の予後不良染色体異常の年齢毎頻度多発性骨髄腫の予後は極めて不良であったが,2000年代に登場した分子標的薬が生存期間中央値を約6年,5年生存率を約50%まで延長した.しかしながら,染色体異常を有する難治性症例がアンメットニーズとなっており,治療成績の向上に向けた隘路となっている (図1) 4).予後不良を示す染色体異常,いわゆるハイリスク染色体異常にはt(4;14),t(14;16),del(17p)の3つが含まれるが,この中ではt(4;14)が最も高頻度かつ予後不良で,全症例の10~20%に検出される (図2) 5).t(4;14)転座の結果,ヒストンメチル化酵素であるmultiple myeloma SET domain (MMSET)が強発現する.MMSETは転写活性化に働くヒストンH3の36番目のリジン残基(H3K36)の過剰なメチル化,及び転写抑制に働くH3K27のメチル化を抑制するなど,エピジェネティクスの改変に働く.その結果,抗アポトーシス因子(IRF4, CD180, Bcl-2, IGF1),接着分子(CXCR4, ITGB7, SLAMF7),DNA修復関連因子(E2F, 53BP1, GADD45)などが脱抑制され,抗がん剤抵抗性を獲得,予後不良の原因となる6,7).従って,MMSETを特異的に阻害する低分子化合物は,t(4;14)転座陽性の難治性多発性骨髄腫の予後改善に有効な治療薬となることが強く示唆される.図1. BLD(ボルテゾミブ,レンリドミド,デキサメサゾン併用療法の予後サブグルーブ解析― 201 ―
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