図3. 抗PD-L1抗体による免疫療法後に完治しなかったマウスにおけるT細胞レパトア解析この免疫記憶マウスモデルでは,CD8陽性 T細胞を抗体で特異的に除去させることで,再移植した腫瘍は生着するようになったため,この免疫記憶にはCD8陽性T細胞が欠かせないことが示された.免疫記憶を獲得したマウスの腫瘍微小環境(TME)とTCRレパトアを解析し,特定のTCRレパートリーを持つT細胞が腫瘍局所で増加し,全身に分布して,宿主に長期間免疫記憶として保存されていることが判明した.また,転移性大腸癌患者で,複数回の転移巣摘出手術を受けた患者腫瘍をレパトア解析等に供することで,共通したTCRクローンタイプの存在も確認された(図4).本研究で樹立したMC38免疫記憶マウスモデルは,全身性のメモリーT細胞の挙動を解析するのに有用なモデル系である可能性が示された2).この免疫記憶モデルはがん免疫チェックポイント阻害薬抵抗性機構の解析モデルとしても有用であることが別途研究から示され,現在もこの系を用いてスクリーニング等を行うことで新規治療抵抗性機構の探索や患者検体の解析から見出された治療抵抗性関連因子の解析を行っている.― 196 ―
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