図1. CRISPR/Cas9スクリーニングの概要1) TogoTV (https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja )のイラストを使用スクリーニングで同定されたMIG6について,複数のsgRNAを用いてノックアウト細胞をそれぞれ樹立したところ,いずれもALK阻害薬にやや抵抗性を認め,ALK阻害薬処理後の残存細胞が有意に増加した.MIG6はEGFRのチロシンキナーゼ領域に結合することで活性を阻害することが知られているため,MIG6欠損により容易にEGFRシグナルの活性化が生じるのではないかと予想し,EGFRのリガンド(増殖因子)であるEGFやTGFαを用いて刺激し,下流シグナルの変化や薬剤感受性の変化等の解析を行った.これまでの研究では100 ng/mL程度のEGFなどのEGFRリガンドを用いた研究が多かったが,ここでは健常人の平均血中濃度からがん患者の平均血中濃度に相当する量(0.25~1 ng/mL)のわずかなEGFを処理し,MIG6の有無が与える影響を確認した.その結果,コントロールのALK陽性肺がん細胞株JFCR-028-3細胞ではALK阻害薬感受性に全く変化は見られなかったものの,MIG6を欠損させたJFCR-028-3細胞では,微量の(わずか1 ng/ml以下の)EGFを添加するだけでEGFR下流の腫瘍増殖に関連するシグナルが活性化し,著明にALK阻害薬耐性となることが明らかとなった(図2).そこで,MIG6欠損による耐性にはEGFとEGFRの結合が重要であると考えられたため,そのリガンド‐受容体結合を抗EGFR抗体薬であるパニツムマブにより阻害する実験を行った.抗EGFR抗体をALK阻害薬と併用すると,ALK阻害薬感受性が回復し,耐性を克服できることが実験的に明らかにされた.そこで,マウスゼノグラフトモデルを用いた動物実験を行ったところ,MIG6を欠 図2. EGF刺激によるALK阻害薬感受性の変化― 194 ―
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