中外創薬 助成研究報告書2023
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― 186 ―growth factors. Taken together, we proposed a treatment using an X inhibitor for ARID1A-deficient ovarian clear cell carcinoma.はじめに“合成致死性”とは,1つの遺伝子だけが機能欠損しても細胞の生存に影響はないが,2つの遺伝子が両方同時に機能欠損したときに細胞が致死となる現象である.例えば,遺伝子Aの欠損型異常のがん患者がいた場合,この患者にAとの合成致死因子Bの阻害薬の投薬治療を行ったとする.正常細胞ではAは正常なため,Bだけが阻害されても正常細胞は死なない.一方で,がん細胞ではAが欠損している上に,さらにBも阻害することで合成致死となる.このように合成致死性を利用したがん治療法(合成致死治療法)は,がん特異性が高く,副作用の少ない治療が期待できる.特に治療法の開発が進んでいない“欠損型”遺伝子異常を持つがんの治療法の開発には,合成致死性の概念の応用が重要である1).ARID1A遺伝子はSWI/SNFクロマチンリモデリング複合体の構成遺伝子である.SWI/SNF複合体は,転写,DNA修復など様々な生物学的機能の制御に関与する.ARID1A遺伝子は,卵巣明細胞がんの約50%,びまん性胃がん(スキルス胃がん)の約30%と治療法が確立されていない難治性がんで高頻度に欠損型遺伝子異常が認められる.その中で,卵巣明細胞がんは,高齢患者だけでなく,子育て世代にあたる50歳以下の若年女性にも,他がん種に比べて比較的高い割合で発症するため,一刻も早い治療法の確立が切望されている.これまでに本研究では,ARID1A欠損型がんにおける有望な合成致死標的として脱ユビキチン化酵素Xを同定してきた.そこで本研究では,ARID1A欠損がんにおける脱ユビキチン化酵素Xを標的とした合成致死性のメカニズムを解明することを目的とする.また,生体内モデルを用いた抗腫瘍効果と合成致死性のメカニズムの反映性を検討することで,前臨床POCを取得する.これらの成果をもとに,ARID1A欠損がんに対するX阻害薬を用いた合成致死治療法の確立を目指している.実験方法マウス異種移植モデルにおける抗腫瘍効果実験細胞をカウントし,PBS/マトリゲルの1:1混合物に氷上に再懸濁した.その後,細胞を5-6週齢の雌のBALB/c-nu/nuマウスの脇腹に皮下移植した.ドキシサイクリン治療試験では,マウスを無作為に2つのグループに分け,ドキシサイクリンを含む飼料または対照飼料のいずれかを与えた.ノギスを使用して数日ごとに腫瘍の体積を測定した.アネキシンV/ヨウ化プロピジウム(PI)染色アッセイアネキシンV–FITC/PIアポトーシス検出キットを使用して,アポトーシス細胞を検出した.細胞を12ウェルプレートに播種し,siRNAをトランスフェクションした.96時間後,細胞ペレットをPBSで洗浄し,アネキシンV-FITCおよびPIとともに25°Cで10分間インキュベートした.蛍光強度はサイトメーターで解析した.アネキシンV陽性細胞の割合は,GuavaSoftソフトウェアを使用し

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