図4. 腫瘍部由来のCAF化肝星細胞に対してGATA4およびUBTFをノックダウンすることでSASP因子の発現が抑制される.おわりに本研究では,肥満誘導性肝がんの発症に重要な肝星細胞のCAF化を制御する因子を明らかにするため,シングルセルRNA-seq解析により取得した遺伝子発現情報を基に擬似時間解析を中心とした情報解析による探索を行った.その結果,GATA4とUBTFの2種の転写因子についてCAF化を制御する候補因子として見出し,プライマリー肝星細胞を用いたin vitro系において実際に肝星細胞内のSASP因子の発現を制御する因子であることを確認した.今後,肝がんモデルマウスを用いたin vivo系においてもRNAiや阻害剤による候補因子の機能抑制を行い,生体内においても肝星細胞のSASP因子の発現を抑制することができるか,またそれに伴う腫瘍形成の抑制が見られか検証を行っていく予定である.また本研究により見出された候補因子のUBTFは,これまで活性変異による神経変性疾患の発症に関連する因子として知られており,細胞老化やSASPとの関連については確認されていなかった.そのため,今後UBTFの機能および標的遺伝子についてその詳細を解析することで,細胞老化の制御における新たな知見を得ることができると期待される.謝 辞本研究は,公益財団法人 中外創薬科学財団様の助成金交付により遂行することができました.この場を借りて深く御礼申し上げます.引用文献 1. doi: 10.1038/nature12347, 20132. doi: 10.1158/2159-8290.CD-16-0932, 20173. doi: 10.1126/sciimmunol.abl7209, 20224. doi: 10.1016/j.jcmgh.2022.07.006, 20225. doi: 10.1002/hep.30965, 20206. doi: 10.1038/nsmb.1516, 20087. doi: 10.1126/science.aaa5612, 2015― 181 ―
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