この38の候補転写因子の中には,肝星細胞の活性化に関連すること報告されているTCF215)といった転写因子も含まれており,本解析により肝星細胞の機能に関連する因子が抽出されていることが確認された.また我々はこれまでの先行研究から,本研究の対象である肥満誘導性肝がんの進展に関連する肝星細胞の特徴の一つとして,肝星細胞の活性化マーカーであるαSMAを高発現していることを確認している3).そこで,38の候補転写因子の内,αSMAを標的遺伝子とする転写因子について絞り込みを行なったところ,BRD4,HAND2,BACH1,GATA4,UBTFの5種の転写因子が抽出された.これらの転写因子の内BACH16),GATA47)においては,肝星細胞と別種の細胞において細胞老化やSASP因子発現の制御を行うことが報告されており,擬似時間解析による情報解析によってCAF化肝星細胞の細胞老化やSASPを制御する可能性がある因子を抽出することができた.図3. エンリッチメント解析により抽出された肝星細胞の性質変化を制御する候補転写因子3)プライマリー肝星細胞を用いた候補因子の検証擬似時間解析による見出された肝星細胞のCAF化を制御する候補転写因子について,肝がんモデルマウスの肝組織から単離したプライマリー肝星細胞を用い検証を行なった.ここでは,肝がん腫瘍部領域から単離したCAF化肝星細胞に対して,shRNAを用いて候補因子のノックダウンを行い,SASP因子の発現をリアルタイムPCRにより解析した.その結果,候補因子の内GATA4,UBTFのノックダウンにより肝星細胞における代表的なSASP因子であるCxcl1やIL-1βの発現が抑制されることが確認され(図4)、GATA4およびUBTFが肝星細胞のSASP因子の発現を制御し得ることが明らかとなった.― 180 ―
元のページ ../index.html#182