2.TFHが有するTCRは腫瘍特異的であるこのような新規の細胞傷害性TFH様細胞並びに従来型TFHが腫瘍細胞に直接反応する腫瘍特異的T細胞であるかを評価するために,in vitroでの検証を行った(図2a).まずシングルセルシークエンスから得られたそれぞれのTFHクローンのTCR配列の中で,数的上位のTCRを抽出した.次にそれらの配列を組み込んだウイルスベクターを作成し,T細胞株であるJurkat細胞に遺伝子導入した.使用したJurkat細胞株はNFATルシフェラーゼ遺伝子があらかじめ導入された細胞株であり,TCRシグナルの下流のNFATの増加を反映してルシフェラーゼを合成できる.さらに我々は同一患者由来の腫瘍を細胞株として樹立することに成功しており,これらの腫瘍細胞株はMHCクラスIIを発現しているため,TCRを遺伝子導入したJurkat細胞株と共培養することで,それぞれのTCRの腫瘍細胞への反応性を評価した(図2b).TFHの中で高頻度に見られたTCRはMHCクラスII発現腫瘍細胞に対して反応性を示したことから,これらのTCRが腫瘍特異的であることが明らかとなった.図2. In vitroでのTFHの腫瘍特異性の検証3.細胞傷害性TFH様細胞は従来型TFHから連続的に分化する細胞傷害性TFH様細胞と従来型TFHの関係性を明らかにするために,両分画が連続的に分化するか検証を行った.シングルセルRNA/TCRシークエンスの結果から,細胞傷害性TFH様細胞と従来型TFHには共通したTCRを有するクローンが多数存在することが明らかとなった(図3a).本結果から両者の分化には連続性があると考えられた.そこでRNA velocity解析を用いてTFHの分化極性を評価したところ,TFHは従来型TFHから細胞傷害性TFH様細胞へと分化極性を有していることが明らかになった(図3b).a) 実験系のシェーマb) TFHのTCRの腫瘍に対する反応性.同一患者由来の腫瘍細胞株とTCRを遺伝子導入したJurkat細胞株とを共培養し,ルシフェラーゼアッセイを用いて評価した.統計解析には t検定を用いた.― 165 ―
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