中外創薬 助成研究報告書2023
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しい役割を明らかにするために本研究を行なった2).実験方法腫瘍組織からLymphocyte Separation Solutionを使用してTILsを抽出し,FACSAriaを用いてCD3陽性T細胞をソートし,10x Single-Cell Immune Profiling Solution KitでシングルセルRNA/TCRシークエンスを行った.また,患者由来腫瘍細胞株を作成するために,収集した腫瘍細胞を10%FCS RPMIを用いて培養を継続し,増殖を認めた腫瘍を細胞株として樹立した.さらに,NFATルシフェラーゼが入ったJurkat細胞株に,TCRシークエンスデータに基づいてTCRをウイルスを用いて遺伝子導入した.これらの細胞株と腫瘍細胞との共培養を行い,TCRの腫瘍への反応性をルシフェラーゼアッセイを用いて評価した(図3a).結果及び考察1.腫瘍浸潤TFHの中に細胞傷害性を有するTFH様細胞が存在するメラノーマ患者の外科切除病変からCD3陽性T細胞をソートしてシングルセルRNA/TCRシークエンスを行った.その結果,腫瘍浸潤T細胞は9つのクラスターに分類された (図1a).その中のCD4陽性TFHクラスターに着目して再クラスタリングを行うと,TFHの細胞集団は細胞傷害関連遺伝子であるGZMA/BやPRF1,並びに炎症関連遺伝子であるCCL4/5やCXCR6を高発現した新規の細胞傷害性TFH様細胞の集団と,非細胞傷害性の従来型TFHのクラスターに分離できることが明らかになった(図1b).図1. TILsのシングルセルシークエンスとTFHの再クラスタリングa) シングルセルTCR/RNAシークエンスデータの解析結果.UMAP(左),各クラスターの割合(右)を示す.b) 腫瘍浸潤 TFHの再クラスタリングの結果.2つの集団に再分類された.UMAP(上)と代表的な細胞傷害関連遺伝子と炎症関連遺伝子(下)― 164 ―

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