図1.― 14 ―実験方法創薬研究・化学薬学研究には,「手に取り出せないもの」「目に見えないもの」が多数存在する.これらをいかに“正確に”“合理的に”デザインし,形(3次元立体電子構造)と機能(物性)を創りだすかがとても重要である.本研究では,「(巧みな技術によって分子をつくる)有機合成化学」を縦糸に,「(光を駆使して分子を視る)分光学」と「(理論と計算機化学によって分子を診る)理論計算」を横糸に組み合わせた独創的研究スタイルにより新たな『構造』『元素』『結合』の探索・合成開拓から,未知化学空間の開発に挑んだ.これらの研究を通じて,薬学・医学・化学・工学などとの境界領域において創薬化学のフロンティアを開拓し,革新的な合成化学,機能性材料の創出を目指した.結果及び考察《準安定結合で拓く未踏化学空間》1.メタ置換ベンゼン等価体の創出1)近年,医薬品の溶解性や代謝安定性などの物性の向上を指向し,分子中のベンゼン環を立体的に嵩高い三次元カゴ状骨格に置換する創薬戦略が大きな注目を集めている.中でも,パラ置換ベンゼンの生物学的等価体については当研究室 (JACS 2017/ACIE 2020/ACIE 2021) を含め盛んに研究が行われてきた.本研究では,メタ置換ベンゼンの 3D 等価体としてビシクロ[3.1.1]ヘプタン(BCH)骨格に着目し,その前駆体として[3.1.1]プロペラン(1)の新規合成法の開発に着手し,新たな合成法と官能基化手法を開発した(図2).現在,ベンゼン環から BCH への変換が創薬パラメーターにどのような影響を与えるか研究を続けている.
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