中外創薬 助成研究報告書2023
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図1. 免疫介在性炎症性疾患横断的血清プロテオーム解析図2. トランスオミックス解析による血管組織細胞のクラスター同定織を薄切し,専用のスライドガラスに固定する.Visiumキット(10x genomics)を用いてライブラリーを作成,シーケンスデータを取得する.3) 統合解析によるバイオマーカーの探索血清プロテオーム解析,空間トランスクリプトーム解析の結果を取得し,統合的に解析する.解析はRパッケージ(OlinkAnalyze,Seurat)を主に使用する.結果及び考察免疫介在性炎症性疾患横断的に実施した血清プロテオーム解析によって,血管炎に特異的な分子群を同定した.同定した分子群のうち,MMP12は血管炎と非血管炎の鑑別において最も優れた診断能を有した(図1).さらに,血管組織のトランスクリプトーム解析によって,MMP12産生細胞のクラスターおよび分子特徴を明らかにした(図2).疾患・病態への特異性に加えて,血清MMP12値は既存の予後予測指標と比較しても良好に再燃を予測し,同値の正常化は画像診断による血管壁肥厚消失を伴うより深い寛解を反映した.血清MMP12値の継時フォローは再燃に先行して上昇を認め,IL6レセプター阻害治療下であっても同様に再燃のモニタリングに有用であった(図3).MMP12は全血RNAシーケンスで検出されない組織由来分子であり,血管炎局所のマクロファージおよび多核巨細胞が主な産生源であるため,血清中の蛋白濃度が鋭敏な疾患活動性マーカーとなると推察した.― 155 ―

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