中外創薬 助成研究報告書2023
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東京大学大学院薬学系研究科Graduate School of Pharmaceutical Sciences, University of Tokyo― 13 ―When we expand the world of chemistry (chemical compounds), which is considered mature, into a virtual space, we realize that there are still untapped chemical spaces. Until now, chemistry has developed on the basis of specific chemical bonds such as amide (peptide)and glycosidic bonds, reactions, and skeletons, and there is a high degree of similarity in molecular (three-dimensional electronic) structures, limiting the chemical space that can be used. Therefore, the purpose of this study is to open up a new chemical space by discovering and utilizing new bonds, reactions, and structures that have not been utilized so far.Abstractはじめに有機化学は元来,生体を構成する分子を扱う学問であり,生命科学に深く関わってきた.糖・核酸・アミノ酸など生命活動に必要な有機化合物を突き止め,創薬・治療・診断に応用してきた.天然・合成医薬の発見・創出は,人類の平均寿命・健康寿命を劇的に延伸させた.「合成化学」の進展は,自然界に微量しか存在しない天然物の人工合成を可能とし,肥料・繊維・ゴムなどの人工材料の開発によって日常生活を豊かにしてきた.こうして,科学・技術における「ものづくり」を担当する「化学」は人類社会を豊かにしてきた.しかし,疾患がほとんど克服できたのかと言うとそうではなく,今も課題は多く残る.では,どのように未開拓領域を見出し,未来に向けた挑戦的課題に取り組めば良いか?これまで発展してきた化学(化合物)の世界・歴史を空間に拡げて眺めると(図1),手つかずの化学空間(ケミカルスペース)が広く存在することに気付く.これまで特定の元素・結合・反応をベースに化学が発展してきたため,骨格・立体電子構造に類似性が高く,使える化学空間に偏りがあった.そこで本研究では,これまで利用されてこなかった新しい結合・反応・構造の発見と利用により,新たな化学空間を拓くことを目的とする.未踏化学空間を拓く新結合・新反応・新構造の探索Exploring…new…bonds,…reactions,…and…structuresto…open…up…unexplored…chemical…spaces内山 真伸Masanobu Uchiyama

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