子動力学やクライオ電子顕微鏡による単粒子解析などの今後の解析が待たれる．次に，コレステロールは，どのようにPolycystin-2を繊毛局在させるのか？について考察する．Pex14欠損細胞株では，恒常的に繊毛膜のコレステロールが低下するために，有意に繊毛局在が低下しているが，わずかな量のPolycystin-2タンパク質が繊毛膜上に観察される．興味深いことに，水溶性コレステロールを添加すると，Polycystin-2タンパク質は，繊毛膜に集積することが明らかになった．このことから，コレステロールは，繊毛膜へのPolycystin-2タンパク質の移行には必須ではなく，繊毛膜での停留に必要であることが示唆された．今後，繊毛膜上のPolycystin-2の分子挙動をライブイメージングすることによって，コレステロールによるPolycystin-2の繊毛膜クラスター構造形成の理解が深化することが期待される．おわりにペルオキシソームから運ばれたコレステロールは繊毛膜上で機械受容性イオンチャネル・Polycysin-2複合体を形成することによって，内臓の左右配置決定に必要なノード流や腎臓における尿流を受容することによって，繊毛病の発症を妨げることが本研究によって示された（図2）．図2. 繊毛膜上のPolycystin/コレステロール複合体の異常は内臓逆位・嚢胞腎の発症に繋がる謝 辞本研究課題を採択していただきました，公益財団法人 中外創薬科学財団の関係の先生方に厚く御礼申し上げます．また，電気生理学解析では，広島大学大学院医系科学研究科 橋本浩一先生，山岡賢治先生，広島大学大学院統合生命科学研究科 細羽康介先生にお世話になりました．最後に，当講座の板橋岳志講師，弘澤萌助教，森田知佳助教をはじめ教室メンバーに感謝致します．引用文献1. Wang, Q., R.A. Corey, G. Hedger, P. Aryal, M. Grieben, C. Nasrallah, A. Baronina, A.C.W. Pike, J. Shi, E.P. Carpenter, and M.S.P. Sansom: Lipid Interactions of a Ciliary Membrane TRP Channel: Simulation and Structural Studies of Polycystin-2. Structure. 28:169-184 e165 (2020).― 139 ―
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