① Polycystin-2 L517R変異タンパク質の電気生理学的解析(コレステロールのチャネルへの直接作用の検討):野生型Polycstin-2-EGFPおよびPolycstin-2 L517R変異体を導入したHEK293細胞株において,膜電位固定―パッチクランプ法により,Polycystin-2 L517R変異タンパク質の電流-電圧関係を計測した.また,チャネル機能喪失型変異体としてPolycstin-2 R325Q-EGFP変異体を用いた.② Polycystin-2 L517R変異タンパク質の繊毛局在解析(コレステロールのチャネルへの間接作用の検討):ゲノム編集技術を用いて作製したPolycstin-2 L517R(マウスPolycystin-2 L515R)変異ノックインmIMCD3細胞株(マウス集合管細胞株)およびメチル-β-シクロデキストリンで処理した野生型mIMCD3細胞について,繊毛,コレステロール,Polycystin-2を免疫染色した.各細胞の繊毛膜コレステロール・Polycystin-2クラスター構造を,共焦点レーザー顕微鏡(LSM800, Zeiss社)を用いて観察した.また,水溶性コレステロールを細胞培養液に添加した後に,各細胞株におけるPolycystin-2タンパク質の繊毛局在を同様の方法を用いて検討した.結果及び考察① Polycystin-2 L517R変異タンパク質の電気生理学的解析:Polycstin-2 L517R-EGFP変異体を導入したHEK293細胞株において,膜電位固定―パッチクランプ法により電流-電圧関係を計測したところ,野生型Polycysitn-2と異なり,チャネル機能喪失型変異Polycystin-2 R325Q変異体と同様の電気生理学的特性を示した.このことから,コレステロールは,Polycystin-2のチャネル活性を直接的に制御することが示された.② Polycystin-2 L517R変異タンパク質の繊毛局在解析:Polycstin-2 L517R(マウスPolycystin-2 L515R)変異ノックインmIMCD3細胞株(マウス集合管細胞株)を免疫染色したところ,Polycystin-2 L515R変異タンパク質は一次繊毛への局在が低下していた.また,メチル-β-シクロデキストリンで処理した正常mIMCD3細胞においても,野生型Polycystin-2の繊毛局在は障害されていた.先行研究より,一次繊毛膜へのコレステロール供給にはペルオキシソームは必須である2).本研究では,ペルオキシソーム欠損症モデルmIMCD3細胞株(Pex14欠損細胞株)の一次繊毛へのPolycystin-2の局在が阻害されていることを明らかにした.また,水溶性コレステロールを処理したPex14欠損mIMCD3細胞株では,Polycystin-2の繊毛局在の回復が確認された.一方で,Polycystin-2 L515R変異ノックインmIMCD3細胞株の繊毛局在は水溶性コレステロール添加でも回復しなかった.以上のことから,コレステロールは,繊毛局在制御にも必要であることが示唆された.このように,本研究によって,コレステロールはPolycysin-2のチャネル活性だけでなく,一次繊毛への局在を制御することが明らかになった.まず,どのようにコレステロールがチャネルを制御しているのか?について考察する.本研究で着目したPolycystin-2のコレステロール結合部位は,チャネルゲート付近に位置しているが,最近,これとは異なる場所でオキシステロールがPolycystin-2と結合しており,チャネル活性に必要であることが報告された3).しかし,コレステロールが,Polycystin-2のイオンチャネル活性をどのように発揮しているかという点についての明確な答えは得られていない.コレステロール結合不全Polycysytin-2変異体構造の解明が重要であり,変異体の分― 138 ―
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