中外創薬 助成研究報告書2023
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答において,シスPD-L1–CD80結合によるPD-1機能制限が解除された際に生じる,B細胞による抗体産生への影響を評価した.(2)フローサイトメトリー法による胚中心B細胞,濾胞ヘルパーT細胞および濾胞制御性T細胞の評価NP-CGGを免疫することによって誘導されるNPに対する抗体産生応答は,T細胞依存的であることから,濾胞ヘルパーT細胞によって応答が増強され,濾胞制御性T細胞によって応答が減弱されると考えられる.そこで,シスPD-L1–CD80結合がこれらの細胞集団に与える影響を評価するため,上記(1)で示した実験条件で免疫されたマウスより脾臓細胞またはリンパ節細胞を調製し,胚中心B細胞,濾胞ヘルパーT細胞および濾胞制御性細胞の割合および数をフローサイトメトリー法によって評価した.B220,FasおよびGL7陽性の細胞を胚中心B細胞,CD4,CXCR5およびBcl6陽性かつFoxp3陰性の細胞を濾胞ヘルパーT細胞,CD4,CXCR5,Bcl6およびFoxp3陽性の細胞を濾胞制御性細胞とした.結果及び考察(1)抗体産生応答の評価シス結合不全ノックインマウスにモデル抗原NP-CGGを免疫してNPに対する抗体産生応答を誘導したところ,野生型マウスと比較して,血清中の抗NP抗体価が低下していた.一方で,T細胞非依存的にB細胞の抗体応答を誘導するNP-LPSあるいはNP-Ficollを免疫した際には,ノックインマウスと野生型マウス間で抗NP抗体価に違いは認められなかった.シスPD-L1–CD80結合不全ノックインマウスにおいてT細胞依存的な抗体産生応答が十分に誘導されなかったことから,T細胞依存的な抗体産生応答をPD-1が阻害してしまわないように,シスPD-L1–CD80結合によってPD-1の機能が制限されていることが示唆された.(2)フローサイトメトリー法による胚中心B細胞,濾胞ヘルパーT細胞および濾胞制御性T細胞の評価NP-CGGを免疫したマウスの所属リンパ節および脾臓から免疫細胞を単離し,蛍光標識された各種抗体を用いて染色した後,フローサイトメータを用いて解析した.その結果,シスPD-L1–CD80結合不全ノックインマウスでは野生型マウスに比べて胚中心B細胞の数が減少していることが確認され,NP-CGG免疫時の抗NP抗体産生がシスPD-L1–CD80結合不全ノックインマウスにおいて低下していることと一致していた.また,濾胞ヘルパーT細胞の数も減少していたことから,濾胞ヘルパーT細胞が産生あるいは増殖する際に,シスPD-L1–CD80結合によってPD-1の機能が制限されていることが示唆された.すなわち,シスPD-L1–CD80結合不全ノックインマウスでは,濾胞ヘルパーT細胞の産生あるいは増殖がPD-1によって抑制されるため,T細胞依存的な抗体産生応答が十分に誘導されないと考えられる.一方,濾胞制御性T細胞の数も,シスPD-L1–CD80結合不全ノックインマウスでは減少傾向を示した.濾胞制御性T細胞の減少によりT細胞依存的な抗体産生応答は増強すると予測されることから,シスPD-L1–CD80結合不全ノックインマウスにおける抗NP抗体価の低下とは辻褄が合わない.濾胞― 125 ―

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