性免疫補助受容体PD-1のリガンドであるPD-L1と隣り合って結合(シス結合)すること,CD80がPD-L1にシス結合するとPD-1がPD-L1に結合できなくなること,その結果PD-1による抑制機能が制限され,T細胞が適切に活性化されるという巧妙なメカニズムを解明してきた(図1)1, 2).さらに,シスPD-L1–CD80結合を解離させることのできる抗体を開発し,この抗体がPD-1の機能制限を解除することで,自己反応性T細胞の活性化を抑制し,自己反応性T細胞によって引き起こされる自己免疫疾患の症状を軽減し得ることを示している3).一方,生体内における免疫応答はT細胞以外にも様々な免疫細胞が複雑に関与しているため,それらにおけるシスPD-L1–CD80結合の影響を解明することが今後重要であると考えた.そこで,本研究ではシスPD-L1–CD80結合がB細胞による抗体産生応答に与える影響に着目して研究を行うこととした.図1. A: 活性化した樹状細胞上ではPD-L1とCD80がシス結合し,PD-L1とPD-1の結合が阻害され,T細胞は強く活性化される.B:CD80が発現していない細胞ではPD-L1とPD-1の結合によりT細胞の活性化は抑制される.実験方法(1)抗体産生応答の評価我々はこれまでにマウスCD80の107番目のロイシンをグルタミン酸に置換した変異体では,CD80–CD28結合やCD80–CTLA-4結合は影響を受けないが,PD-L1とのシス結合のみが起こらなくなることを示してきている.このCD80の変異を導入したノックインマウスでは,シスPD-L1–CD80結合のみが不全のため,野生型マウスと比較することで,シス結合の生体内での抗体産生応答における役割を理解することができる.T細胞依存的な抗体応答をマウスで解析するために,キャリアタンパク質Chicken Gamma Globulin(CGG)にハプテンである4-ヒドロキシ-3-ニトロフェニルアセチル(NP)を結合したNP-CGGをモデル抗原として使用し,アジュバントであるAlumやComplete Freund's adjuvantと混合して,野生型とシス結合不全ノックインマウスに免疫を行った.継時的にマウスより採血し,ELISA法にて血清中のNPに対する抗体価を定量した.また,T細胞非依存的にB細胞抗体応答を誘導する,NP-LPS,NP-Ficollを野生型とノックインマウスに免疫し,同様に血清中の抗NP抗体価を測定した.以上により,T細胞依存的,およびT細胞非依存的な抗体産生応― 124 ―
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