図2. iChipから単離した微生物の16S rRNA遺伝子系統樹ンプル(Cupriavidus metallidurans UIM0114 由来の培養物)存在することが明らかとなった.E. coli をはじめとするグラム陰性細菌は外膜で覆われており,分子量が 600ダルトン以上の化合物の細胞内への侵入を防いでいる.また発達した薬剤排出ポンプを有していることから,グラム陰性細菌に活性を示す抗生物質を開発することは難しいとされている.そのため,Cupriavidus metallidurans UIM0114 の培養物中から E. coli に活性を示す抗生物質が見いだされたことは非常に興味深い.一方,Cupriavidus metallidurans UIM0114が生産する抗生物質は,グラム陰性細菌全般ではなく,E. coli にのみ活性を示すことから,同菌にのみ存在する分子を標的としている可能性がある.今後はCupriavidus metallidurans UIM0114 の培養物を中心に,種特異的活性を示す抗生物質の単離を目指す.また iChip から単離された UIM0029 株は,16S rRNA 遺伝子シーケンス解析から希少放線菌の一種である Actinorhabdospora 属であることが判った.近年では Streptomyces 属放線菌から新しい抗生物質を発見することが難しくなっていることから,次なる抗生物質の探索源として希少放線菌(Streptomyces 属以外の放線菌)が注目されている.一方,⽶国国立生物工学情報センターのデータベース上では,Actinorhabdospora属放線菌に関するゲノム情報は 1 菌株しか登録されておらず,本菌株に関する情報は未解明な部分が多いことが判った.そこで Actinorhabdospora filicis UIM0029 のゲノム情報を取得し,これを解析したところ,同菌には既知の二次代謝産物生合成遺伝子クラスターとは相同性が低いものが多数存在することが明らかとなった(表1).この結果は Actinorhabdospora ― 106 ―
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