R2A または 1/2 LB 寒天培地 (固形化前) に加え,これに iChip を浸漬することで各ウェルに微生物細胞を接種した.寒天培地の両面を半透膜 [ポリカーボネート メンブレン (孔径0.05µm)] で覆った後,iChip を⼟壌サンプルで満たしたプラスチック容器に埋め込んだ.30˚C で1 ヶ⽉間の培養後,各ウェルから分離した寒天プラグを新しい寒天培地上に接種した.寒天培地上で十分な生育が認められたコロニーを再度寒天培地上に植え継ぎ,純化培養を行なった.その後,16S rRNA 遺伝子のシーケンス解析を実施し,iChip から分離された菌株の系統樹を作成するとともに,ライブラリー化した.② 抗菌活性試験I: 培養物の調製iChip から単離した微生物を 10 mL の液体培地(LB, TSB, NB, SYM, MR5, R4, R2A および SMS 培地)を用いて,30˚C で8⽇間振とう培養 (200 rpm) した.1,600 µL の培養上清を遠心エバポレーターにより乾固し,160 µL の滅菌水に溶解することで,培養上清と比較して 10 倍の濃度の培養サンプルを調製した.II: 抗菌物質検定プレートの作製抗菌活性試験の検定菌として,Staphylococcus aureus(グラム陽性細菌),Escherichia coli, Pseudomonas aeruginosa および Acinetobacter baumannii(それぞれグラム陰性細菌)を使用した.これら病原菌をミューラーヒントンII培地を用いて対数増殖期まで培養後,細胞濁度 (OD600) が 0.03 となるよう希釈し,ミューラーヒントンII寒天培地に塗布したものを検定プレートとした.I で調製した 10倍濃縮した培養物 2.5 µL を各検定プレートにスポットし,阻止円の有無により各種病原菌に対する抗菌活性を評価した.③ Actinorhabdospora filicis UIM0029 の全ゲノムシーケンスおよび二次代謝産物生合成遺伝子クラスターの解析Actinorhabdospora filicis UIM0029 を ISP2 寒天培地上で30˚Cで 3⽇間培養し,フェノール・クロロホルム抽出によりゲノム DNA を調製した.PacBio シーケンスにより全ゲノム解析後,二次代謝産物生合成遺伝子クラスター予測ツール antiSMASH を用いて,同菌に存在する二次代謝産物生合成遺伝子に関する情報(遺伝子クラスター数およびクラスタータイプ)を取得した.全ゲノム解析は株式会社 生物技研に委託した.結果及び考察これまでに⻑野県内の 3 地点から取得した⼟壌サンプルから,iChip を用いて 104 菌株の細菌を分離している(図2).その中には既知細菌との 16S rRNA 遺伝子の相同性が低い新種の細菌 Paenibacillus sp. UIM0019[相同性 97.15%(1478 塩基中1436 塩基)]や Azospirillum sp. UIM0033 [相同性 97.19%(1388 塩基中1349 塩基)]が含まれるなど,多種多様な菌株を取得することができている.これら微生物から 48 菌株を 8 種類の培地を用いて培養し,合計 384 の培養物を調製後,S. aureus, E. coli, P. aeruginosa および A. baumannii を対象とした抗菌活性試験に供した.その結果 S. aureus にのみ活性を示すものが 6サンプル(Pedobacter sp. UIM0012, Streptomyces sp. UIM0021,および Streptomyces sp. UIM0031 由来の培養物),E. coli にのみ活性を示すものが 1 サ― 105 ―
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