東京生化学研究会 60周年記念誌
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東京生化学研究所の発癌研究から 豊島区高田の東京生化学研究所を初めて訪問したのは40年程前、恩師の岡本敏彦先生ならびに首藤紘一先生(東大・薬化学教室)の御指導の下で行っていた発癌と制癌の化学研究が軌道に乗り始めた頃だった。 当時、東京生化学研究所では、岡田正志先生が牽引する発癌性ニトロソアミンの研究が世界をリードする成果を上げ、薬化学教室の先輩、望月正隆先生が中心となって進めていた有機化学研究の緻密さに筆者は感服していた。 岡田・望月両先生に多くのご指導を賜り、自身の発癌・制癌の化学研究を円滑に進めることが出来た。 また、岡田先生とは科研費がん特の班会議でも度々同席させて頂き、そのご縁で食通でもいらした先生に幾度となく素敵なお店を教えて頂いた。 研究所は昭和60年(1985年)に閉じられたが、翌年に制癌に関わる分子創製のテーマで(公財)東京生化学研究会の研究奨励金に応募し、採択して頂いた。 誠に使いやすい研究費で大いに助かった。 そして28年を経た平成25年(2013年)、今度は研究助成金申請を選考する立場として(公財)東京生化学研究会とご縁を持つことになった。 筆者自身は先述のような経験があったので、有機化学研究者として(公財)東京生化学研究会に研究助成を申請することに抵抗はなかったが、選考委員を拝命して、化学系研究者の応募が少ないのが気になった。 毎年の応募テーマの設定では、化学系のテーマ設定を網の広いものにして応募数を保とうとした。 令和元年(2019年)には(公財)東京生化学研究会が、筆者も平成27年(2015年)にご縁を頂いたCHAAOと合併し、財団名も改称の計画と聞いている。 今後の本財団の時代時代の要請や医学・薬学・基礎科学の方向性に即した進化と社会貢献、およびその成果を眺めさせて頂くのを楽しみにしている。橋本 祐一(財団現選考委員)東京大学名誉教授0901960-2020 TBRF-60th CHAAO-10th

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