東京生化学研究会 60周年記念誌
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委員会から見える薬学研究の今 令和元年(2019年)から選考委員会Cの委員をさせて頂いております。  委員会では、海外の学会への研究者派遣、海外から国内の学会への講演者招聘、および薬学研究を志す大学院生への奨学金の審査をしています。 海外派遣助成、海外招聘助成に挙げられるテーマは分子生物学と有機化学合成の二大分野のもと、細胞内シグナル伝達、がん、神経科学、構造解析など主要課題が並んでいます。 特に印象に残ったテーマとして脱髄疾患、自閉症、アミロイド、数理モデル、光反応、電子顕微鏡によるレセプター解析があります。 私が基礎医学を学んだ昭和55年(1980年)前後は、多くの生体反応がまだまだ現象論的に語られ分子レベルの解明がなされていませんでした。 ことに免疫学や神経科学分野でその傾向が強く、もやもやした気持ちで丸暗記せざるを得なかったことを覚えています。 それから40年経ち、生体の諸現象の解明が飛躍的に進み、今や化学レベルから物理学レベルの探求に移行しつつあるようにすら感じます。 奨学金は幸い多くの予算を当てていただいていますが、それでも選抜せざるを得ません。 大学院生は研究室の貴重な戦力であり、ことに申請される人物や研究内容はどれも素晴らしく、そこからの選抜にいつも悩みます。 授与される研究室の偏りを防ぐなど、できるだけ公平な配分となるよう話し合いながら審査に当たっています。 これからの薬はさらに根源的な作用点を持つようデザインされるのではないでしょうか。 創薬の新しい潮流においても、わが国の持続的な研究努力と人材育成は、人類への貢献を支えるものと期待しています。絵野沢 伸(財団現選考委員)国立成育医療研究センター再生医療センターリサーチアソシエイト0821960-2020 TBRF-60th CHAAO-10th

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