東京生化学研究会 60周年記念誌
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(公財)東京生化学研究会 創立60周年記念誌に寄せて 私は平成26年(2014年)より当財団の選考委員を務めてきた。 それまで財団の選考委員の経験は皆無であった私であるが、それでも(公財)東京生化学研究会はちょっと特殊なのでは、と当初から薄々感じることがあった。 それは、この財団は、昨今は厳禁とされる「三密」という言葉がピッタリな、ちょっと「密」が過ぎるのではという印象である。 まず選考会議室が妙に「密」であった。 以前は京橋近くのビルに事務局があり、その会議室で毎回選考会議が開催されていたのだが、隣に座った選考委員と本当に肘がガッツリ当たる距離で、ひとつの机を全員で囲んで議論を行っていた。 私が勝手に思い描いていた、財団とはゆったりとした音楽が流れている中で優雅に議論する所に違いないという妄想は脆くも砕け散り、本財団の「密」さ加減にまず驚いた。 またそこで展開される議論も、かなり「密」であった。 単に申請書に記載されている科学的な内容だけでなく、申請者の研究歴、理念、直近の研究環境まで俎上に載せて、本当に財団として援助したいのは誰かを密に議論することも多く、生物系と有機系で枠を取り合うことも多くあった。 さらに上述したプロセスで生じる一体感のおかげで、選考委員間で密な仲間意識が芽生え、私事であるがいくつも共同研究が始まり、また自分が担当する授業の非常勤講師を今でもお願いしている当時の仲間もいる。 もちろん助成研究報告・懇親会を通じて、採択された研究者との繋がりも生まれ、振り返ってみると(公財)東京生化学研究会の「三密」は、良いことずくめであることに気づかされる。 この財団に関わることができ、個人的に本当に幸せである。 次の10年も、ますます財団が発展することを祈念しております。 なお、後年に現在を振り返ったときに、コロナ禍が世界を席巻した事を思い起こすため、マスクの顔写真を掲載した。浦野 泰照(財団現選考委員)東京大学大学院薬学系研究科、医学系研究科・教授081東京生化学研究会60周年に寄せて

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