東京生化学研究会 60周年記念誌
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~実績に依らず面白い研究を いかに発掘するか~ たいへん幸運なことに、私は過去に二度も(公財)東京生化学研究会の助成金を頂く機会に恵まれました。 最初は酸化ストレスと創薬に関連したテーマで、2度目は「SOD1構造変化によって引き起こされる小胞体ストレスを標的としたALS診断治療法の基盤開発」というテーマでした。 2度目はちょうど新しい研究室に引っ越した頃で、また具体的な疾患をターゲットにした全く新たなテーマにチャレンジし始めた時期でした。 新しい研究分野に足を踏み入れる際にありがちなことですが、新参者の実績不足から研究費を獲得しづらい状況にあっただけに、この時の支援は特に有り難かったことを覚えています。 申請時点でALS関連の発表論文は1報だけしかなく、未発表データを中心にアイディア勝負で書いた申請書でしたが、当時の選考委員の方々にたいへんポジティブに評価して頂いたことが印象深く思い出されます。 最近は私自身が研究費申請の評価者という立場に立つことも少なからずありますが、どうしても申請者の研究実績や過去の業績に目が行きがちです。 特に自分の専門から離れた研究分野になると、その研究計画や手法を十分理解するのに苦労することもあり、そうなるとなおさら実現可能性を推し測る手段として論文業績に頼りがちです。 過去の実績に依存しすぎずに、萌芽的であっても発展性のある魅力的で挑戦的な研究を発掘し支援する事が、未来の生命科学を担う若手や女性の研究者育成に必要不可欠であることは言うまでもありません。 決して簡単なことではありませんが、そこに積極的に取り組む姿勢にこそ60年に亘る(公財)東京生化学研究会の特徴があり、これからもそうあり続けて欲しいと願うとともに、理事としてその一助となりたく思っております。一條 秀憲(財団現理事)東京大学大学院薬学系研究科教授・創薬機構長0661960-2020 TBRF-60th CHAAO-10th

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