東京生化学研究会 60周年記念誌
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今後の公益財団のあるべき姿懸念と提案共同基金設立の提案司会 理事長、いかがでしょうか。 最後に今後の公益財団のあるべき姿についてお願いします。永山理事長 いや、もう今の先生方のご意見もっともだなと思います。 最後は中外製薬がいくらお金を出せるのかと(笑)。 私は一線を退いて、今はもう経営は奥田さん(現中外製薬社長)、小坂さん(現中外製薬会長)がやっているので彼らが判断することではありますけれども、少しずつ増やしてやっぱりもうちょっと予算があれば競争率も高すぎるという部分は解決できると思っています。司会 10倍というのは懸念されるように大物がまず残るのですね。 若手でこの研究は面白そうだけれども、どうなるかわからないようなものはなかなか救えない。 競争率が3倍ぐらいだったら救える可能性はあると思いますが。永山理事長 今度10兆円基金というのが出来ますよね。 しかし一方で、ある識者とこの間話したら科学技術振興のための基金としては10兆では足りない、200兆だという人もいるわけなのです。 それで欧米を見ていると、例えば英国のウエルカムトラストという公益信託団体があって、あそこはだいたい年間支出が900億円ぐらい使っていますよね。 これはウエルカムという人が大変な資産家だったので、そこから基金を出してということで出来ています。 フランシス・クリックという研究所が数年前(2016年開設)にできましたけれども、そこの大半をウエルカムトラストがポンと出している。 年間予算が毎年900億円ありますからね。 だからやはり私は国に出させるというのも勿論大事なのですけれども、国も結局財政状態があるのでなかなかそう簡単にはいかない。 大隅良典先生(東京工業大学栄誉教授、2016年ノーベル生理学・医学賞受賞)とパネルディスカッションで同席をしたことがあるのですが、大隅先生から企業が基礎研究に資金を出すのをもっと増やせないかというご質問があったのですけれども、増やせるものなら増やしたいと思う一方で、国の財政と一緒で会社の財政状態が必ずしも安定していないと、出せる時は出して、悪い時はパタッと止まる、そういうことではなかなか続かないわけなので、企業が基礎研究にお金を出すということは奨励されるべきなのだけれども、国が出せないから民間でといっても結構難しいところがあるのです、と言ったのです。 ですから、私が提案したいのは科学技術に依存している産業は例えば利益の一部を税金のようにある基金をつくって、そこに入れるとその分は税額控除をしてもらえる仕組みなどです。 民間がやろうとしたら、そういう工夫で広くお金を集めないと、ウエルカムさんみたいな人は日本にいないのでこれはなかなか集まらない。 赤い羽根運動みたいにしてお金を集めてというようなことをやるべきかな、と思っています。司会 大変すばらしいご提案をありがとうございます。 共同基金が実現できれば素晴らしいですね。 高梨常務、いかがでしょうか。 これからの財団のあり方、あるいは将来展望で考えていることがありましたら、最後の締めとしてお願いします。次ページにつづく→059

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