東京生化学研究会 60周年記念誌
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若手研究者を育てるための審査基準についてをするのではなくて、この人をやっぱり育てるのだというような視点で研究助成ができたらいいなと思います。 あとはやはり患者さんの治療に実際に当たっている臨床医にも何らかの支援をしたいですね。 医師であり、かつサイエンティストとして新しい創薬に興味を持っている若い人は少なくないのですが、Physician Scientistを育てる国の明確なビジョンが示されていない事は残念で仕方ありません。 そういう若い医師を少しでもencourageできるような工夫ができれば、この財団の存在意義も一層強まるのではないかな、と私は思います。審査の難しさ永山理事長 50年史の座談会で出ているのが、どうしても大物研究者に研究助成が行かざるを得ないようなことがあるのですが、これについてはどうお考えですか。 若い人を育てたいというのに対して。司会 非常に難しいところがあると思います。 大物研究者の研究業績リストにはNatureやScienceなどの超一流誌が並んでいる事が多いので、それだけで良い点数が付いてしまう傾向はあります。 実際に素晴らしい研究をされているのですが。 本音としては、先ほど小川先生がおっしゃったように失敗はあるかもしれないけれども、それ込みで、まだ業績が十分ではない若手研究者を採択したいところなのですが。小川先生 研究助成金を獲得した人が将来 JCA-CHAAO賞を貰えばそれは素晴らしい事です。 萌芽研究というのはそうではなくて、きちっとした目的を持って自分はこういうことをやりたいなという研究者にあげること、その成果というか結果は問わないのだけどもその目的と研究過程を審査するということです。 これは実は以前、審査員をやったことがありました。 確かに大物の研究者は文章がうまいので、結局そういうところへ研究費が集中するのです。 だからこの若手研究者から能力ある人を見抜くのはなかなか難しいことなのですが、でもいわゆる萌芽研究というのか、育てたい芽があるような研究は長いスパンで研究をやらせてあげたら面白いと思うのです。 それがやはり全部当たるとは思えませんので、助成を決定することは大変と思います。司会 司会者の立場を離れて話をさせて頂きたいのですが、今小川先生がおっしゃったのは私もまさにその通りと思っています。 業績はまだ十分ではないのですが、将来伸びると予感させる若手研究者を書類審査で見抜くのは非常に難しいですね。 対面で、例えばしばらく一緒にいたらかなり見抜けると思いますが。 やはり伸びる研究者は目が輝いていますね。 学校の勉強はできなかったけれども、研究者になるとすごいのがたまにいて、突飛なこと、しかしひょっとしたら面白いかもしれない事を言い出すのがいるのです。 しかし、それを書類審査で見抜くことはほとんど不可能ですね。次ページにつづく→057

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