東京生化学研究会 60周年記念誌
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小川 先生財団の将来展望と今後の事業展開について薬は伝統的な部分を背景とした財団のTBRFがあり、それから臨床研究的なものがあって、そこに「がん」という単なる一臓器の病気ではなくて、ほとんどの臓器、血液も含めた幅が広い領域が入ってきたと。 疾病の中で「がん」の存在はものすごく大きく、それをたまたまCHAAOでやっていたということなのです。 TBRFは別にがんにフォーカスはしてはいないのですけれども、せっかくCHAAOであれだけ臨床研究から薬にもアプローチしていくということで、これからやはり薬を作るというのはかなり薬学的なものプラス臨床的な見方というものが非常に大事だと私は仕事をやりながら感じていたので、ここに接点はあるなということで有機的な結合はできると思ったわけなのです。司会 従来TBRFが強みとしていた基礎研究、これを決してないがしろにする事なく、今理事長がおっしゃったようにいわゆるCHAAOの方はどちらかというと臨床系ですので、事業統合後の財団は基礎から臨床までというのが一つの特徴になります。 池田先生が言われたトップレベルのサイエンス、若手育成、グローバルの根底にあるのは基礎から臨床までという形で、それはまさに今、理事長がおっしゃったような形のものと思います。(5)財団の今後の在り方・将来展望小川先生 どうやら財団の将来展望というところに入ってきたと思いますので、私の考え方を少し聞いてください。 国際がんフォーラム(IAAO)は先ほど言いましたように、非常に貴重な事業ですので、継続された方が良いと思います。 ただ一つの区切りとして、例えばアドバイザリーボードメンバーを少しずつ若返らせていくということが必要ではなかろうかと思います。 これは言いにくいですが、Bruceもかなりの歳になります。 とても良いリーダーですけれども次世代の人が必要だという事を考えておいた方が良いと思います。 内容についてですが、かつてはcytotoxicとか分子標的薬だったのですが、その後免疫チェックポイント阻害剤が出てきて、ごく最近では、個人的にこれがおそらく一番話題になると思いますのは、undruggableと言われていたKRASの変異に対する薬をアメリカのFDAが認可したことです。 Sotorasibといいますが、これは効きます。 しかしながら耐性が出るのも早く、すでに耐性の論文が出てはおります。 このようにこれから先も少し分子生物学の基礎的研究に基づいた新しい分野の新薬の開発が進むと考えられます。 それから今一つの方向としては、プレシジョンメディシンというのが少しずつ成熟してきましたのでそういうことがよくわかっている人をアドバイザリーボードメンバーの中に入れて行かれるというのをお勧めします。それから先ほど言いましたCancer Education Consortium:CEC(現在、臨床腫瘍学教育研修プログラム次ページにつづく→055

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