はじめに、この度の新型コロナウイルスに罹患された方々およびご家族の皆様に心からお見舞い申し上げます。また、臨床現場あるいはワクチン接種等においてコロナ禍への対応に尽力されたすべての関係者に衷心より感謝申し上げます。 東京生化学研究会(TBRF)は昭和35年(1960年)12月に文部大臣により財団法人として設立が認可され、令和2年(2020年)に60周年を迎えました。 本誌はこの60周年を記念して刊行が企画されたものです。 TBRFは当初、研究所を併設しており、がんなどの医学・薬学研究を自ら推進することで研究者の育成をはかる一方で、薬物治療ならびに新医薬品に関する基礎的・独創的な研究の助成、奨学金支給などの事業を展開しておりました。 昭和59年(1984年)に研究活動を中心とする財団運営から研究助成事業を主とする運営に発展的に方針を変更いたしました。 研究助成事業、奨学金支給事業と共に、昭和60年(1985年)には海外で開催される国際会議などへの研究者派遣事業および国内の国際会議への海外研究者の招聘事業なども開始しております。 事業の中で特に、中外製薬株式会社創業70周年記念事業の一環として、アジア地域から博士号取得済の若手研究者を招聘し、わが国の大学などの研究機関において日本側受け入れ研究者と共に研究に従事するアジア地域招聘国際共同研究助成金を開始した事は注目すべき事業と考えております。 これはわが国とアジア諸国における医学・薬学の発展に資することを目的にしたもので、他に類を見ない画期的事業で今日まで継続的に行われており、日本を中心としたアジア地域の研究振興に寄与しており、多くの研究者から好評を博しています。 その後、平成20年(2008年)12月に公益法人制度改革関連3法が施行され、これに伴いTBRFも平成22年(2010年)9月に公益財団法人へ移行しました。 中外製薬株式会社ではTBRFの公益活動に対する支援と共に、社会貢献の一環として一般社団法人中外Oncology学術振興会議(CHAAO)の活動も支援してきました。 CHAAOはわが国のがん研究並びにがん医療の発展、そしてがん医療の受益者であるがん患者さんへの貢献を目指して平成21年(2009年)10月に設立されましたが、特に国際がんフォーラム(IAAO)は最も力を入れている中核的な事業の一つです。 IAAOは、“日本のがん研究・治療をリードする日本人研究者・臨床医にがん領域の世界トップオピニオンリーダーとの情報交流・討議の場を提供することを通じて、世界的ネットワークを構築する事”を目的として行われています。 TBRFとCHAAOは共に中外製薬株式会社を出捐企業とする非営利団体ですが、平成30年(2018年)7月には公益性を高める観点からTBRFとCHAAOの合併が提案され、平成31年(2019年)4月に新たな「公益財団法人 東京生化学研究会」として発足いたしました。 翌年令和2年(2020年)に公益財団法人東京生化学研究会は創設60周年を迎え、記念式典を計画いたしましたが、コロナ禍のため開催は残念ながら中止となりました。 しかしながら、60周年を機に両組織における完全な事業統合が企画立案され、令和4年(2022年)4月の発足を目指して財団の名称も「中外創薬科学財団」に改称して新たな一歩を踏み出すこととなりました。 設立当初からの目的である、薬物治療ならびに新医薬品に関する基礎的・独創的な研究に、研究助成を通じて引き続き貢献して参ります。 以上、本財団の“60年余の歩み”を紹介させて頂きました。 最後になりましたが、本記念誌へご寄稿をはじめ、今日まで公益財団法人東京生化学研究会のためにご支援・ご鞭撻頂いた理事・評議員・監事・選考委員の先生方および関係者の皆様に心よりお礼申し上げます。今後とも新公益財団法人「中外創薬科学財団」をどうぞよろしくお願い申し上げます。2022年3月吉日理事長ご挨拶
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