東京生化学研究会 60周年記念誌
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永山 理事長CHAAOの設立経緯について永山 理事長永山理事長 これは平成20年(2008年)ですけれども、平成21年(2009年)に亡くなられた尾形先生(尾形悦郎:当時中外製薬社外取締役、癌研究会有明病院名誉院長)にご相談して、尾形先生のアドバイスもあって小川先生や吉田先生(吉田光昭:東京大学名誉教授)が賛同してくれて始まりました。 尾形先生はMGHの John T. Potts(Jackson Distinguished Professor of Clinical Medicine, Massachusetts General Hospital)とも大変近しく、内分泌で有名ですが骨代謝の権威でもあったわけですね。 活性型ビタミンD3は当時中外製薬の主力製品でした。 私は以前から中外製薬における医薬品の研究・開発・生産・販売についてはきちんとサイエンスを基本にして活動を行うという気持ちがありました。 作りやすいものを作ってマーケットシェアを上げるという発想はなかったですね。 上野公夫も昔から基礎的な研究を重視してアカデミアの先生方や公益財団法人実験動物中央研究所(実中研)の野村達次先生などと交流を深め医薬品の研究開発を科学的にどう進めるかという姿勢でいました。 従って、ヒトG-CSF(顆粒球コロニー形成刺激因子:骨髄中の顆粒球系、特に好中球の分化・増殖を促進する作用を有する)については、G-CSFの研究に関心のあった中外製薬の尾野氏が実中研に居られた病理学者である上山義人先生や玉置憲一先生(東海大学名誉教授)、やはりG-CSFの研究を行っていた浅野茂隆先生(東京大学名誉教授)、大沢仲昭先生(当時東大第三内科、大阪医科大学教授)、平嶋邦猛先生(埼玉医科大学教授)、長田重一先生(当時東大医科研)、垣生園子先生(東海大学教授)らと共同作業で進めたのです。 中外製薬が力を入れていたビタミンD3は、中外製薬の西井氏がその分野において著名であった昭和大学の須田立雄先生と協力して共同研究開発を行ってきておりました。 ビタミンD3の臨床研究を熱心に進めておられた尾形先生もビタミンの研究会を作られていました。 活性型ビタミンD3は欧米ではそれほど認められてはいませんでしたが、日本ではかなり進んでいました。 そこで骨代謝をテーマとして世界のブレーンを集めて議論する場をつくれないかと尾形先生に相談した結果、John T. Pottsにも入ってもらい、日本からは尾形先生、アメリカからは John T. Pottsという2人でチェアマンをするBone(骨)フォーラムが始まりました。 このBoneフォーラムの内容は極めて高度で、骨代謝における最先端のテーマを取り上げて議論していました。 ある時参加している先生の一人が私に言われた事で印象的だったのは「このフォーラムは素晴らしい内容だけれども、製薬会社である中外製薬がなぜここまでやるのですか」と言われたことです。 けれども、そこが私の狙いで、骨代謝基礎研究を重視するという流れを作りたくてフォーラムを作ったわけです。  ロシュとのアライアンス締結の結果、ロシュからアバスチンやハーセプチン、タルセバ等のがん領域の治療薬を多く扱うことになり、がん領域の市場シェアでナンバーワンになったわけですね。 当時医薬品の研究開発においてがん領域が主流になりつつあった中、がん市場でシェアトップとなり、がん領域における医薬品の基礎研究、基礎医学をテーマとするBoneフォーラムのような仕組みを作りたいと考えた結果、CHAAOが設立されたのです。046

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