東京生化学研究会 60周年記念誌
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長野専務理事十分な準備に基づいて決断されたことは良く理解できましたが、先方のロシュの方はこのアライアンスについてどのように考えていたのでしょうか。●永山理事長 世界の医薬品市場で2番目に大きい日本市場で、日本ロシュは35位でした。 このアライアンスによって日本におけるプレゼンスが大きく向上すること、加えて中外製薬の創薬力への強い期待があったと思います。 一方、ロシュは日本に古くから進出していたわけで、フーマーさんの決断は極めて思い切ったものでした。 ロシュの株式はファミリーが過半数を所有していて、ファミリーはマネジメントには入っていませんが取締役会のメンバーに入っています。 ロシュのファミリーに対するリスペクトは大きい。 ロシュは、中外製薬が1925年に上野十蔵によって創業されたことに対しても十分にリスペクトを持ってくれていました。 ロシュには中外製薬と似たカルチャーがあったということです。長野専務理事結果として、中外製薬がグローバル企業として発展する足掛かりを掴んだことになりますね。●永山理事長 大事なのは、研究開発が強くなっていかないといけないということです。 彼らと描いたのは、ロシュおよびジェネンテックが開発した製品については、日本では中外製薬が全て開発・販売権を持ち、一方で中外製薬が生み出した製品は海外ではロシュが開発・販売するのに加え、中外製薬が進出している国では中外製薬の販社と協力して、販売を行うということになりました。長野専務理事永山理事長の考えるグローバリゼーション(国際化)と他の人が考えるものとは少し違いがあるようですね。●永山理事長 多くの日本メーカーは、新薬を開発して世界の市場に出すという枠組みで、グローバライゼーションあるいは国際化と言っているのですけれども、やはり日本の企業の規模では世界150カ国ぐらいに販売拠点を持って、研究拠点も世界にいくつか持って、多くの国で工場も持つ事は極めて困難だと思います。長野専務理事会社が大きく伸びた要因として、アライアンスと同時に画期的新薬の創出もあったようですが。●永山理事長 そうです。 重要な点は自社品をロシュに出せるかでした。 幸い中外製薬ではアクテムラ以降もアレセンサ、ヘムライブラなどのロシュに導出した画期的新薬が世界の市場でブロックバスターとして大きな売り上げを計上しました。 さらに抗体エンジニアリング技術の確立など、中外製薬の創薬力が開花し、今後も画期的な新薬が期待されます。 00沿革抄余録/理事長インタビュー次ページにつづく→033

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