東京生化学研究会 60周年記念誌
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臨床系研究の活性化に向けて 私と(公財)東京生化学研究会とのご縁はまず令和2年(2020年)のCHAAO賞があります。 加えて研究会の選考委員を平成23年(2011年)から8年務めたことも思い出されます。  年に二度ほど京橋にある狭いビルの一室で出前寿司をいただきながら、研究会からは石館さん、医学・薬学から7-8名の会議でした。 私は臨床出身ですので薬学の先生方と親しく話せる機会であり、また旬の情報に出会う貴重な場でもありました。 随分真面目に議論したという印象で、医薬品の開発研究だけでなく病態を含めたその基礎にもテーマを広げていることがこの研究助成の特徴ではないかと思います。 さて、このところ毎年のように日本の研究力の低下が報道されております。 その要因分析を行うつもりはありませんが少しだけ述べさせていただきます。 臨床系研究は平成12年(2000年)以降に、研究体制から倫理まで、大きな曲がり角に立ちました。 また大学院生を中心とした従来型の研究ではゲノムから生物学、臨床における意義までを統合して行う研究が難しくなってきました。 一方、国立研究開発法人からはインパクトの高い論文が増えています。 充実した臨床試験の支援体制、教育や管理などの業務の少なさ、そして大学間や基礎・臨床の壁を超えた共同研究といった背景があると思います。 大学も是非参考にしてほしいと思います。 臨床系ではいわゆるPhysician Scientistを目指す割合が減っているとの指摘もあります。 医学研究において臨床からの視点を持つ重要性や、これまでの臨床を変えていく、あるいは作っていくという喜びがあることを若手に伝えていく必要もあると思います。 (公財)東京生化学研究会やCHAAO事業が果たされてきた大きな役割に感謝し、研究会のますますの発展を願うものであります。直江 知樹(財団元選考委員)国立病院機構名古屋医療センター名誉院長1201960-2020 TBRF-60th CHAAO-10th

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