東京生化学研究会 60周年記念誌
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デジタル社会にむけた定性分析雑考 (公財)東京生化学研究会(以下、財団)が60周年を迎えられたことを心からお祝い申し上げます。 私は選考委員として関わりましたが、特に印象に残っているのは、アジア地域招聘国際共同研究助成金事業です。 助成研究報告会では、座長を務める機会も頂き、在任中に大変お世話になった石館光三常務理事に厚く御礼申し上げます。 薬剤師教育を主務とする現在、コロナ禍による教育プログラムのオンライン化は、学修効果を高める部分もありましたが、本稿では、オンサイト必須として実施している実習内容を紹介します。 担当する生薬学分野の実習では、特徴成分の化学的性状に基づく定性的な試験による生薬の化学的鑑別を実施しています。 大学教員になって四半世紀になりますが、シンプルで五感に訴える内容に、大いなる興味をもって取り組む学生の姿勢は全く変化がありません。 実はこの実習内容、私が学部学生(東大薬学部)として実施した内容が基本になっています。 その時に購入した参考書が財団創設者石館守三先生ご執筆の「微量定性分析 理論と実験」(南山堂)で、私の書架に常備しています。 蔵書奥付には、「第20版1981年9月20日7刷発行」とあり、初版1949年からの重版を考えると驚異的なベストセラーです。  初版の石館先生自序から下記を引用させて頂きます。  「微量の物質を取扱う訓練は却ってよく注意力を集注せしめ、反応の操作を修得せしむるに便利である。 資材と時間の大なる節約は多少の器具類の煩を考慮に入れるとしても尚大なる利点である。」  令和3年(2021年)9月にはデジタル庁も設置され、医療分野でもオンラインによる診断や服薬指導も一定の条件下で認められる「デジタル社会」を迎えつつあります。 急速な少子高齢化や国民の利便性を考慮すれば、当然なのかもしれませんが、デジタル化が困難な複雑系である患者様や研究対象生物に向きあう医療従事者や研究者の養成には、細心の「注意力」をもって、わずかな定性的な変化を捉えるセンスが必須であることは論をまたないと思います。  財団の益々のご発展を祈念申し上げます。市瀬 浩志(財団元選考委員)武蔵野大学薬学部・薬学研究所教授1141960-2020 TBRF-60th CHAAO-10th

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