東京生化学研究会 60周年記念誌
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選考委員を経験して (公財)東京生化学研究会創立60周年おめでとうございます。 当時本研究会常務理事でおられた岡田正志先生のご厚意で評議員に就任したのが平成4年(1992年)でありました。 以来平成21年(2009年)まで評議員を17年間、理事として平成22年(2010年)から平成27年(2015年)まで務めさせていただきました。 この間、16年間にわたり常務理事の岡田先生、松井先生、石館先生のもとで選考委員会Aの委員を務めました。 本研究会の創立以来の目的「薬物治療並びに新医薬品の創製に関する基礎的、独創的研究の振興を図り、もって人類の健康と福祉に寄与する」に沿って、選考分野は創薬、生化学、細胞生物学、分子生物学におよび基礎から臨床までをカバーしました。 領域が広くまたこの分野の進歩が甚だ著しく、新しいコンセプト、技術がつぎつぎに登場し、選考に戸惑いを覚えることも多かったです。 標的となる分子を同定し、抗体や核酸を駆使して新薬を開発する手法が最近の傾向であり成功例も多く、国としてもライフサイエンスを経済成長戦略の重要な柱と位置づけ集中的な投資も行われていますが、えてして近視眼的な戦略になりがちであると感じます。 本選考委員会の務めは創薬の到達点には相当距離がありそうでも優れた先駆的研究を発掘する事ではないか。 豊富な資金と人材を擁するビッグラボの応募内容が優れているのは当然で、地味に見えても本助成が真の意味で有効活用になりそうな研究の発掘も重要と思われました。 応募水準は誠に高く、書類選考後の意見交換はかなり激しいものでありました。 理想が貫けたかはなはだ心もとないですが、その精神は選考委員全員共有していたと思います。 緊張して疲れる会議でありましたが、勉強になったし、今思い出すに実に楽しかったです。 本研究会が今後形を変えても長期的視野に立って医療分野の発展の支援を続けていただけるよう念願する次第です。井上 圭三(財団元理事、元評議員、元選考委員)帝京大学副学長1021960-2020 TBRF-60th CHAAO-10th

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